人権団体がラオス大使館に抗議――ソムバットさん返せ
2014年1月9日5:23PM
「ソムバットさんを返せ!」――東京・西麻布にある駐日ラオス大使館に向けて一二月一三日朝、抗議の声が響いた。
二〇〇五年のマグサイサイ賞(地域指導部門)の受賞者である社会活動家ソムバット・ソムポーン氏は二〇一二年一二月一五日、ラオスの首都ビエンチャンの警察検問所前で何者かに拉致され、以後、消息が不明。国際社会から説明を求める声が広がり、公安組織が関わっているとの疑いが持たれているにもかかわらず、ラオス政府はまともな捜査をしていない。
この強制失踪事件から約一年となる同日、アムネスティ・インターナショナル日本とヒューマン・ライツ・ウォッチの二団体から十数人が横断幕やポスターを掲げて参集、大使館前での抗議行動を行なった。同日は日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)特別首脳会議が一五日までの日程で東京で開幕。人権や民主主義を重んじるとしている日本政府だが、これまで同事件について沈黙を続けており、この日は公安警察と思われる男性が抗議する人たちの写真を無断で撮影していた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗さん(弁護士)は「一五日には安倍晋三首相とラオスのトンシン・タンマヴォン首相との首脳会談が行なわれます。日本はラオス最大のドナー国。安倍首相はこうした影響力を行使し、ソムバット氏事件について取り上げるべき」と話す。両団体を含むNGO(非政府組織)六団体は一〇日、安倍首相と岸田文雄外務大臣に対して同様の要請をした。
ラオス大使館は門を閉じ、建物三階の窓から写真を隠し撮りしていた人影以外は動きはなく、事前に連絡をしていたにもかかわらず二団体による共同書簡の受け取りも拒否。アムネスティ・インターナショナル日本の若林秀樹事務局長は書簡をポストに投函し、事件の真相解明を改めて強く求めた。
(片岡伸行・編集部、12月20日号)