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配偶者などのいるタイ人四六人――人権無視の強制送還

2014年1月10日5:28PM

 一二月八日午前、法務省入国管理局は成田空港からタイ人四六人をチャーター便で集団強制送還した。チャーター便による強制送還は七月のフィリピン人七五人に次いで二回目。同局警備課は九日夕方に記者発表した。同課への電話取材によると、男性二六人、女性二〇人で、三〇~五〇歳代が中心。うち、四~一一歳の子どもが三人含まれる。その大半が「不法滞在」「不法入国」事案だが、薬物等の刑事事件案件の被送還者も四人いたという。前回のフィリピン人の強制送還の際には手錠拘束をしたが、今回は機内では外した。本年度予算では当初、中国とフィリピンへのチャーター便が計上されていたが、中国政府に拒否された。

 今回特に問題なのは、日本での滞在期間が二〇年を超える人が一三人もいたことだ。被送還者の中には日本人配偶者のいる女性など、配偶者や子どもと分離した状態で強制送還された人が多数いるという情報もある。しかも強制送還について、入管収容施設で本人に告知されたのは、前日晩か当日朝だった。このため全員が家族や弁護士、支援者などに連絡をとることができなかった。中には退去強制令書の発付から提訴可能な六カ月以内で、行政処分の取消し訴訟を検討中の人もいたという。

「世界人権デー」の一二月一〇日、定例記者会見で谷垣禎一法相は「国会閉幕と同時に送還したのは偶然。在留特別許可されず、退去強制が決定した者の送還については、できるだけ早く行なうのが基本的な方針だ。現に裁判中であれば次の段階には進まないが、退去強制令書発付までいけば法務省としては手続きを終えたということになる」と、「裁判を受ける権利」(憲法三二条)を脅かす発言をした。二〇一〇年に来日調査した国連人権理事会特別報告者も不透明な在留特別許可手続や、裁判へのアクセスが困難な状況などについて、日本政府に勧告を出している。

(西中誠一郎・ジャーナリスト、12月20日号)

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