東電株主訴訟で求釈明――どうすれば防げたか
2014年1月23日5:26PM
「福島第一原発事故はどのようにすれば防げたと考えるのかを明らかにせよ」――。東京電力の株主42人が現・元取締役27人を相手取り、原発事故の損害金として5兆5045億円を同社に賠償するよう求めている株主代表訴訟で、株主側弁護団が昨年暮れ、東電に対するこんな内容の求釈明書(質問状)を東京地裁に提出した。
発端は、弁護団が昨年6月に出した準備書面。被告の取締役が対策を講じていれば原発事故を回避できた可能性があったことを指摘し、具体的な方法として、外部電源の強化、非常用電源の分散化や高所設置などを細かく挙げた。
ところが、被告の取締役を支援するため訴訟に補助参加している東電は12月12日付の準備書面で、「津波には多角的な視点からの総合的な対策を検討する必要があった」とした上で、実現には「数多くの技術的な課題の解決のため、極めて多くの人的資源、費用や時間が必要」で、「現実には全く不可能だった」と主張した。
そして、株主側が挙げた個々の対策を、(1)外部電源は耐震設計審査指針を遵守し、安全性を十分に備えていた、(2)非常用電源の設置場所は分散され、複数の構造になっていた、(3)高い津波を予見することは不可能だったので、高所設置は現実的な選択肢となり得なかった、などとことごとく否定した。
これに噛みついたのが、株主側の河合弘之・弁護団長だ。12月19日の口頭弁論で「東電の基本的な態度に怒りを禁じ得ない」と強く批判し、冒頭の求釈明書提出となった。文面で「あれも駄目、これも無意味と『ケチ』を付けるばかりでは、国民も市民も納得しない。訴訟の争点も定まらない」と強調している。
東電の弁護士は法廷で「回答の要否を含めて検討したい」と述べるにとどまっているが、河合氏は「この訴訟の原点。東電には言う義務がある」と話している。
(小石勝朗・ジャーナリスト、1月10日号)