イタイイタイ病「全面解決」――遅きに失した合意
2014年1月24日6:55PM
明治以来の鉱山開発によるカドミウム汚染が原因のイタイイタイ病をめぐり、神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会(被団協、高木勲寛代表)と三井金属鉱業(仙田貞雄社長)が合意し、カドミウム腎症に対する補償の意味合いを持つ一時金支払いが決定した。
昨年12月17日、富山県内で締結した合意は、(1)三井金属鉱業は被害を謝罪(2)土壌汚染と農業被害は全て解決したと確認、患者らへの補償や公害防止のための被団協らの立入調査には引き続き対応(3)神通川流域住民健康管理支援制度を新設し、カドミウム腎症にも一時金を支払い(4)被団協は全面解決を認め、三井金属鉱業は解決金を支払う――という内容。これにより、国の公害病認定制度では骨粗鬆症を伴わないためにイタイイタイ病と認められなかったカドミウム腎症に一人当たり一時金60万円が支払われる。汚染地域に1975年以前に20年以上居住し、尿検査で腎機能の影響が認められれば、カドミウム由来ではないと否定できない限りは支払い対象となる。
富山県では、この合意を機に環境省の委託で汚染地域住民に対し行なってきた健康調査を、毎年受けられるよう拡充することを決定した。調査対象は8000人だが、従来は5年ごとで、受診率は3割程度にとどまっていた。
今回の「全面解決」について高木代表は、「遅きに失した。また全面解決に至らない水俣病、新潟水俣病のことを思えばおめでたいという言葉は受け入れられない」と述べ、巨大企業と政府を相手にそれぞれ訴訟で闘った「四大公害病」被害者を慮った。
近年、カドミウム腎症はより寿命が短くなるなどの調査結果が明らかになったが、環境省は「検査値の異常は見えるが日常生活に支障はない」(日田充・保健業務室長補佐)とし、認定基準は見直さない姿勢。企業と患者との「全面解決」の意味がわかっているのか。
(まさのあつこ・ジャーナリスト、1月10日号)