原発「回帰」を狙う安倍政権――民意無視のエネルギー計画
2014年1月27日6:10PM
国のエネルギーの基本方針を定める「エネルギー基本計画」の素案が昨年12月6日に公開され、1月6日までパブリック・コメント(一般からの意見聴取、以下パブコメ)にかけられたが、民意無視の資源エネルギー庁の強引なやり方に批判が集まっている。
資源エネ庁によれば、この1カ月間に集まったパブコメの数は1万9000件。政府は公聴会の開催などは予定していない。当初は今月にも閣議決定が強行されるとみられていたが、与党内からの異論の噴出などから2月に持ち越されそうだ。
エネルギー基本計画案では、原発を「準国産エネルギー」「廉価」「安定供給」とし、「重要なベース電源」として位置付けている。「世界で最も厳しい水準の新規制基準」で安全性が確認された原子力発電所については、再稼働を進める。核燃料サイクルを「着実に推進する」とし、高レベル放射性廃棄物については、「国が前面に立って最終処分に向けた取組を進める」としている。
安倍政権の考えを色濃く反映し、「原発回帰」の色濃い内容だ。
原発事故の収束が見えず、被害者が苦境におかれている現在、原発が「廉価」で「安定している」とは説得力に欠ける。さらに、核燃料サイクル構想が破綻している中、「着実な推進」とのみ記しているのは現実からの乖離だ。この点は、「自民党エネルギー政策議員連盟」からも異論がふきだしている。
【「国民的議論」を無視】
2012年夏、民主党政権下で、エネルギー政策を決めるための「国民的議論」が行なわれた。全国11カ所での意見聴取会に加え、パブコメ、討論型世論調査を実施。パブコメでは、寄せられた約8万9000件の意見のうち87%が「原発ゼロ」を、78%が「即原発ゼロ」を選択した。
これを踏まえ、12年9月14日に「2030年代に原発稼働ゼロが可能となるよう、あらゆる政策資源を投入する」とした「革新的エネルギー・環境戦略」が決定された。目標時期をいつにするかという点については多くの議論があったが、もはや原発ゼロへの方向性は不動のものと思われた。
しかし、原発ゼロの方向性は、同年12月に安倍政権が発足すると、崩れ去った。安倍晋三首相は昨年1月、原発ゼロの方向性を「ゼロベースで見直す」と明言。
それを反映したかのように、エネルギー基本計画を議論する資源エネルギー庁の審議会のメンバーから、飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)、大島堅一氏(立命館大学教授)、伴英幸氏(原子力資料情報室共同代表)など、原発慎重派が姿を消した。再開した審議会のメンバー15人中13人が原発の維持・推進の立場だ。審議会の座長は、強固な原発推進派で知られる三村明夫氏(新日鐵住金(株)相談役名誉会長)だ。今回のエネルギー基本計画案は、そうした中で策定された。
実は、12月6日の段階で公表された「エネルギー基本計画案」は、事務局(資源エネ庁)が作成したものであり、審議会で審議される前のもの。パブコメにかけてから、その後2回差し替えるという異例の措置をした。このことからも資源エネ庁の急ぎぶりがわかる。
また、パブコメを積極的には広報せず、問い合せ先すら書いていない。パブコメの送付先となるファクス機は1台しかなく、年末年始は不通。最終日はつながらなかった。市民団体からの再三の要請にもかかわらず、全国各地での公聴会は開催していない。
FoE Japanおよび原子力規制を監視する市民の会は、街頭で、パブコメの提出を呼びかけるとともに、資源エネ庁に対してパブコメを公開審議すること、全国各地で公聴会を行なうことを要請。1月8日、第一次集約分の6904筆を資源エネ庁に提出した。
資源エネ庁は「パブコメは現在、精査中。どのような形でいつ公開するかはわからない」とのみ回答。国民不在の中で原発ありきのエネルギー基本計画が決められようとしている。
(満田夏花・FoE Japan、1月17日号)