福島の子どもたち インドを訪れ絵画制作――原発輸出より平和交流
2014年2月7日5:04PM
「広島・長崎・福島を体験した日本が事故の収束もできないまま、原発を売りつけていいのか」――。そんな思いで、福島の子どもや母親たちが昨年12月27日から1月6日まで、インド南部カルナータカ州の州都バンガロールを訪問した。児童労働を体験した子どもたちをアートで支援するボーンフリーアートスクール(以下、BFA)インドと同日本支部、画家の増山麗奈さんの共同企画による絵画制作交流プロジェクトだ。
インドでは18基の原発が稼働しているが、原発の割合はインド全体のエネルギー消費の2%にすぎない。一方、再生可能エネルギー割合は12%。特に風力発電は急成長分野で、2012年の風車の新設数は中国、ドイツに次いでインドが世界第3位だ。
訪問した一行は、インドの子どもたちと一緒に、ピカソのゲルニカよりも大きな3・3メートル×9・5メートルのキャンバスに、戦争や核の被害のない平和を願う絵を描いた。福島県伊達市から札幌に避難した宍戸柚希さん(13歳)や福島県郡山市から京都市に避難した2児の母である萩原ゆきみさんは健康被害や友人との別れなど {福島の今} を伝えた。
「キャンバスの真ん中に木を描いて、左側には戦争を、その反対に生き生きとした未来を描こう」
BFAの生徒、ヴァンカテシュ・アップさん(17歳)が提案した。アップさんは幼少の時に父親の暴力から逃げるために家出し、電気ショックを受けるなどのパワハラを受けながら働いていた小売店にいたところをBFAに助けられた。今は私立の高校に通っている。
原発事故によって汚染され食べられなくなった伊達市の大好きな桑の実を描きながら思わず泣いてしまった柚希さんに対して、BFAの撮影係のスブラマニさん(21歳)が「その情熱を忘れずに誰か他の人のために使って」と語りかける場面も。
都会(東京)が田舎(福島)に原発を押しつける。その構図はインドでも変わらない。インドの原発のほとんどは先住民にお金をちらつかせて建設されてきた。しかし、大人たちが {経済発展} のために犯してきた罪を、賢い子どもたちは見抜きはじめている。
「憲法9条とマハトマ・ガンディーの精神は同じ。インドと日本が平和教育で繋がれば世界を変えられる」
そう話すのはBFA代表で画家のジョン・デバラジさん。BFAでは今夏、さらに大規模な福島とインドの交流を企画している。
(九重なおみ、1月24日号)