福島・子どもの甲状腺がん患者――「疑い」は16人増に
2014年2月27日5:18PM
どこまで子どもの甲状腺がん患者は増えるのか。第14回福島県「県民健康管理調査」検討委員会(星北斗座長)は2月7日、福島市内で会議を開いた。子どもの甲状腺がん検査で、26万9000人の受診者のうち、がん患者は33人(前回比7人増)、「疑い」は41人(同9人増)で、前回より16人増の計74人が甲状腺がん、あるいはがんの疑いと診断されたと発表した。
検討会のたびに患者が増加しているが、星座長は「(患者数は)想定の範囲内。放射線等の影響との関係は検討する必要があるが(影響は)考えにくい」との見解を示した。県立医大は県の委託で調査を実施、さらに「研究」の名目で、大学の倫理委員会に申請して承認を得た。申請書では「小児甲状腺がんは年間100万人あたり1~2名程度と極めて少なく、結節の大半は良性」(2011年9月)としていたが、患者数が増えてくると、「最新の研究で4000~5000人に1人」「スクリーニング効果(検査による早期発見)」と当初の基準を変える見解を示してきた。
33人という数字は、福島県内の拠点病院等での新たながん登録で肝臓がん33人、すい臓がん30人(11年総数・全年齢、国立がん研究センター)に匹敵する。放射能の影響を考慮しない場合、各地で同率の子どもが潜在的に甲状腺がんであると想定され得るが、国・厚労省による対策の動きはない。調査結果は「福島県の地域限定」に矮小化される可能性もある。
同医大の鈴木眞一教授は同日、甲状腺がんの遺伝子解析・ゲノム調査を今後、行なうと説明。「保護者に説明できる根拠」を示すとした。調査と治療、研究、情報の管理と活用が特定のグループに独占され、医療政策が「県―県立医大」という閉鎖系で完結する可能性も否めない。この検討会が「新たな安全神話」構築の場にならないよう、今後も多様な視点でチェックしていくことが重要だ。
(藍原寛子・ジャーナリスト、2月14日号)