誤認逮捕の男性が国賠訴訟――失態続きの大阪府警
2014年3月12日5:41PM
ガソリンカードを盗んだなどの窃盗容疑で大阪府警北堺署に誤認逮捕され、85日間も勾留された会社員の男性(42歳)が2月18日、大阪府と国に対し「違法な逮捕と起訴で長期間拘束されて精神的な苦痛を負った」と、慰謝料など計1180万円の賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
昨年1月、堺市内の駐車場の車から給油カード2枚が盗まれ、4月になって男性が窃盗容疑で逮捕された。そのカードで給油したと5月に再逮捕され、大阪地検堺支部が起訴。同署は近くの防犯カメラに男性が写っていた映像を決め手としたが、男性の弁護人を務める赤堀順一郎弁護士の調べで犯行時間帯に男性が高速道路を通過したETC記録によってアリバイが成立。地検も再捜査でこれを認め起訴を取り消し、男性を7月に釈放、大阪地裁も公訴を取り消した。
後に防犯カメラの時計が狂っていたことが判明したが、同署はそれも調べていなかった。さらに、義務付けられている画像押収を怠ったため映像は消去されてしまった。訴状によると、取り調べた刑事は「あなたは子どもさんを叱れますか。その汚れた手で子どもの頭を撫でられるのか?」などと男性の尊厳を傷つける言動で自白を迫り、地検堺支部も捜査の不備を指摘せず漫然と起訴をした。
赤堀弁護士は「スリや痴漢の現行犯逮捕ではなく令状請求の必要な通常逮捕ですよ。事件発生から最初の逮捕まで3カ月もかけて一体警察は何をしていたのか。ガソリンスタンドのレシートすら調べていない呆れる杜撰さです」と怒る。窃盗事件そのものは未解決のままだ。足を使わず防犯カメラばかりに頼る最近の犯罪捜査の怠慢ぶりが露呈した格好だ。
大阪府警と地検は男性に謝罪したが「違法行為はない」として内部処分は一切なし。大阪府警はここ半年ほどで7件も誤認逮捕をするというとんでもない失態を続けている。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、2月28日号)