東京海上の保険金支払い漏れ――“監督しない”金融庁
2014年3月20日6:08PM
終わったはずの保険金未払い問題が、またも浮上した。
端緒は、東京海上日動火災保険の自動車保険。事故の主な賠償以外に付随する「臨時費用/臨費」契約について、死亡または負傷させた相手への見舞金などに充てる対人臨費(最大10万円)、約12万件に未払いの可能性があることが発覚したことだ。その後、同社は、入院関連費用などを支払う人身傷害臨費(最大10万円)で約1・5万件、対物事故を起こした際の見舞金などを補償する対物臨費(一律1万円)で約1万件(2002年4月~03年6月)の未払いの可能性を明かした。
だが2月7日、同社説明会見で永野毅社長は「最善を尽くした。不払いだったとは考えていない」と強気。その姿勢を支えていたのが、監督官庁である金融庁の保険金支払いについての考え方だ。
2005年秋以降、金融庁は保険金の支払いの是正を損害保険会社26社(当時)に対して求めた。しかし、保険契約の中には臨費のように、事故があったことを会社が知っても、契約者が実際に費用負担したことを申し出ないと支払われない付随的保険契約がある。事故発生が前提でも、会社は契約者が費用負担した事実は申告を受けないとわからないというのが理由だ。その対応に金融庁は「一定の理由がある」と理解を示した。顧客との契約書の保存期間を超えて、亡霊のように保険金支払い漏れが現れた原因は、そこにある。
同社は請求があれば、時効を理由に拒否せず対応する意向だが、中には10年以上経過している契約もあるため、同社でも全容は把握できていない。事故経験がある契約者は問い合わせてみるべきだ。
同様の眠った事例は同社以外でも心配される。だが、金融庁は保険会社に判断を任せた過去があるため、ここでも全容把握は困難。金融庁保険課は監督指針の改正などで「対応済み」としており、未払い発覚は“かなり特殊な例”として、静観する構えだ。
(中島みなみ・ジャーナリスト、3月7日号)