佐賀地裁、国の主張認めず――漁民に制裁金支払いを命じる
2014年5月1日5:44PM
国営・諫早湾干拓事業による漁業被害を認定された有明海の漁民が、開門するまで国に制裁金を支払わせるよう申し立てた「間接強制」について、佐賀地裁(波多江真史裁判長)は4月11日、国が2カ月以内に開門しなければ原告の漁民49人に1人当たり1日1万円の支払いを命じる決定をした。
諫早湾干拓潮受け堤防排水門の開放を命じた福岡高裁判決が確定しているものの、事業者である農林水産省が期限を過ぎても開門しないという憲政史上例のない事態が続いている。国は、農民らの抵抗で準備工事ができず、農民らが申し立てた開門差し止めの仮処分を昨年11月に長崎地裁が認めたことを、開門できない理由にしていた。
しかし決定は、農民らの協力が得られるよう代替工事などを検討すべきとし、仮処分には対抗措置がとれるなどとして国の主張を退けた。国は、即日福岡高裁に決定の取り消しを求める抗告をし、執行停止を申し立てた。
だが、「『よみがえれ!有明海訴訟』を支援する全国の会」の岩井三樹事務局長は、「国が開門できないとした理由を(佐賀地裁が)全部否定した全面的な勝利。新たな理由を付け加えないかぎり、福岡高裁が国の主張を認める可能性は低い。開門が見えてきた。長期化することはない」と述べた。2カ月後に開門しなければ、1日1万円で月約1500万円、1年で2億円弱を国は支払わねばならない。
原告の佐賀県太良町の平方宣清さん(61歳)は、「開門せずに血税で制裁金を支払うなど国民が許さないでしょうが、今後は世論形成がカギです」と話した。
同じく原告の長崎県島原市の中田猶喜さん(64歳)は、「諫早湾干拓は自民党の利権と官僚の癒着によるムダな公共事業の象徴。息の根を止めるまで闘う」と決意を新たにしていた。
(永尾俊彦・ルポライター、4月18日)