東京・葛飾の運転手が提訴――固定残業手当は無効
2014年6月23日12:22PM
ブラック企業の手口として広がる「固定残業手当」を無効とする訴訟が起こされた。東京都葛飾区の運送会社、多摩ミルクグループ傘下の(株)エイチ・ビー・エス(小島抄智代代表取締役)を相手取り、同社で働く佐々木義幸さん(42歳)ら3人が6月5日、「固定時間外手当と称して何時間働いても定額の残業代しか支払わないのは違法」とし、同手当の無効と未払い残業代など約4000万円の支払いを求め、東京地裁に提訴した。
訴状などによると、佐々木さんらはビールなどを配達するドライバー業務に従事しているが、3人とも過労死レベル(月80時間の残業)を超える長時間労働が常態化。佐々木さんの場合、最も多い月には206時間超の残業も。にもかかわらず、同社の給与「月30万円」は「基本給15万円プラス固定時間外手当15万円」と決められ、何時間働いても「月15万円」の残業代しか支払われていない。この15万円が何時間分の残業代に当たるのかや深夜割増賃金が含まれているかどうかも不明だという。
佐々木さんらが加盟する全国一般東京東部労働組合多摩ミルク支部(斉藤達男執行委員長、約80人)が所管の向島労働基準監督署に訴えたところ、同監督署は4月7日付で同社に対しこれら長時間労働や残業代不払いなどの是正を勧告したが、同社は従う意思を示していないという。
提訴後、厚生労働省記者クラブで会見した東京東部労組の須田光照書記長は「固定残業手当問題は労働相談でも増えている。それを指南する悪徳弁護士や社会保険労務士がいる」とした。原告代理人の吉田健弁護士も「最低賃金を下回る基本給と固定時間外手当が同額というのは異常で、勧告に従わないのも悪質。ここまでひどい固定時間外手当制度は法律上無効だ」と述べ、「こんな状況で(安倍政権が導入をめざす)『残業代ゼロ制度』などとんでもない」と指摘した。
(片岡伸行・編集部、6月13日号)