「オール沖縄の象徴」翁長那覇市長へ自民新風会が出馬要請――沖縄県知事選へ向け動き加速
2014年6月24日10:22AM
沖縄県那覇市議会の与党最大会派自民党新風会11人(金城徹会長)は6月5日、那覇市役所で翁長雄志市長(63歳)と面談し、今年11月に投開票(予定)の沖縄県知事選への出馬を正式に要請した。公の場で出馬要請が行なわれたのは今回が初めて。
金城会長は「県民の信頼を広く集め、県民の心を結集し、県民の負託に応え得る最適の候補者として、ぶれない政治家翁長那覇市長を決定した」と要請書を読み上げ、翁長市長に手渡した。
要請後、翁長市長は記者団に対する明確な回答を避けたものの、「那覇市の街づくりと同時に『沖縄建白書』のような県全体の枠組みづくりもやってきた」と述べ、基地問題の解決に向け“オール沖縄”の維持に強い意気込みを表明。要請自体については検討する旨を示し、知事選出馬の可能性に含みを持たせた。
さらに翌日(6日)の那覇市議会定例会の代表質問で、金城会長は翁長市長の基本姿勢について「辺野古移設を認めることは、新たな基地の建設に自ら加担することになる。これから後の世代に大きな禍根を残すことになる」と質問。これに対して翁長市長は、「地元の理解の得られない移設案を実現することは事実上不可能」と答弁した上で、「基地問題で県民の心を一つにできる政治体制の実現。これが私の政治の原点だ」と述べた。
翁長市長が正式に出馬表明した場合、自民党県連は事実上、分裂した状態で県知事選挙を戦うことになる。
この事態を避けるため、県連側は「党の方針に相反する」として、同党所属の那覇市議17人に要請中止か、要請行動への不参加を事前に求めていた。だが、結果として出馬要請は行なわれた。
翁長市長に近い関係者は、「前向きに検討している。そのためにも公明党の協力が絶対に必要で、諸懸案事項をクリアできれば正式に出馬を表明する」という。さらに周辺では経済界も抱き込む形で支援の取り付けが進んでいる。
県内ホテル大手「かりゆしグループ」CEO(最高経営責任者)の平良朝敬氏、建設・小売業大手「金秀グループ」会長の呉屋守将氏らは「オナガ雄志知事を実現する同志会」を設立、6月12日に会合を開き、翁長市長への要請を正式に決定する方針だ。
連携した強力な「仲井眞県知事包囲網」ができあがる。
【「オール沖縄」再生か】
一方、名護市では「米軍普天間飛行場移設問題に係る訪米報告会」(主催・沖縄県名護市)が6月4日、同市民会館で開催された。この報告会には主催者発表で約850人が参加。同行した玉城デニー衆院議員(生活の党)も出席し、訪米の成果をアピールした。
稲嶺進名護市長は、5月15日から24日の訪米スケジュールの全日程を、パワーポイントを駆使して市民に分かりやすく紹介。
具体的にはコロンビア大学などでのトークイベントが4件、上・下両院議員との面談12件(うち本人対応4件、補佐官対応8件)、政府機関要請4件、シンクタンク・有識者面談が16件、さらに国内外のメディア取材が13件あったという。
稲嶺市長は面会先で、仲井眞弘多知事の辺野古埋め立て承認について「公約違反により県民に失望感を与え、内外に誤ったメッセージを送った」と強調、問題が解決していないことをくり返し訴えたと述べた。さらに民主党のジム・ウェッブ元上院議員が「新基地建設に否定的な意見を聞くことができた」と発言したことも紹介した。
訪米報告会の後、稲嶺市長は記者団に対し、沖縄県知事選で新基地建設を白紙に戻すため、「保守革新の垣根を超えて戦える人を擁立しないといけない」と述べた。
「オール沖縄の象徴」とされる翁長市長が正式に立候補を表明すれば、辺野古への新基地建設は困難を極めることになる。政府与党はその現実を、真正面から受け止めなくてはならない。
(本誌取材班、6月13日号)