“解釈改憲”内閣に首相官邸前は騒然!――集団的自衛権容認を閣議決定
2014年7月15日11:25AM
自衛隊が発足から60年を迎えた7月1日、安倍政権は夕方に臨時閣議を開き、集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行なった。専守防衛を守ってきた自衛隊の活動範囲が拡大し、日本の安全保障が大きく揺れる可能性が出てきた。
民意無視の閣議決定を前に、抗議の声が高まりをみせた。公明党が自民党の解釈改憲案に合意した6月30日夜、東京・永田町の首相官邸前には約1万人が結集し、「安倍はやめろ!」「憲法守れ!」などと訴えた。抗議に訪れた宇都宮健児・本誌編集委員は、「憲法9条があったから、日本は殺しも殺されもしない国だった。それを閣議決定で破ろうとしている。これはナチスのやり方だ」と強調。元自衛官でレンジャー隊員だった井筒高雄さんは、「“正義”という言葉で戦争をする権利はない。自衛隊を米軍の戦争に参加させるなら、誰も自衛隊に入らない」と憤った。
臨時閣議を控える7月1日朝にも、首相官邸前を数千の市民が抗議の声で覆った。「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の高田健さんは、「秋の臨時国会で自衛隊法が改正されれば戦争が現実をおびてきます。これからは、今日の閣議決定を実行化させないための闘いをしていきましょう」と呼びかけた。
同日夕方からは官邸前緊急抗議行動が始まり、続々と人が訪れた。夕方5時過ぎに主催者が閣議決定の一報を伝えると、周りからは「ふざけるな!」との声が噴出した。現場付近には多くの警察機動隊が投入され、一部市民が強制排除を受けて騒然とする場面もあった。
【反対訴え焼身自殺も】
集団的自衛権をめぐり、抗議のため焼身自殺を図る事件も起きた。
現場は人が多く行き交う東京のJR新宿駅南口の横断橋。6月29日午後2時10分ごろ、地上約20メートルの横断橋の鉄枠に登っていた男性が、自分の体に火を付け自殺を図った。火はすぐ消し止められ、男性は病院に搬送された。顔などにやけどを負って重傷だが、命に別状はないという。
捜査当局によると、男性は午後1時ごろから横断橋上で拡声器を使って「集団的自衛権反対」と主張したほか、安倍政権批判をした。その後、ペットボトルに入れていたガソリンを頭や衣服にかけ、ライターで火を付けた。現場の目撃情報などによると、与謝野晶子が戦中、日露戦争に出征した弟を思い詠った「君死にたまふことなかれ」の一節を最後に詠んで火を付けたという。
捜査当局によると、男性は首都圏に在住する63歳の日本人とみられる。政治団体には入っていない一般人で、捜査当局は政治的動機などを慎重に調べているという。横断橋に登る直前、一部の報道機関に自殺をほのめかす電話をかけていたともされる。
翌日の30日。横断橋周辺を歩き回り、写真を撮る若い男性の姿があった。事件報道がほとんどされないため「いてもたってもいられず現場に来た」という大学生の川野貴裕さん(24歳)だ。「新宿の街はもう何事もなかったかのよう。それがショック」としながら、「(自殺の)手段は好きではないけれど、自分も平和を守る行動をしなければという気持ちになりました」と話した。横断橋下で「集団的自衛権反対」を訴えていた齋藤英里子さん(34歳)は、「もう戦後の日本じゃない。戦時中との認識を持たなくては……」と声を曇らせた。
(北方農夫人・ジャーナリスト+成澤宗男、渡部睦美・編集部、7月4日号)