「病棟転換型居住系施設」構想で反対集会――厚労省「検討会」は条約違反
2014年7月17日10:39AM
「病棟の看板を掛け替えてもそこは“地域”ではない」――。
精神科病院の空き病棟を“居住施設”として利用する構想が厚生労働省の検討会で話し合われていた問題で、元入院患者やその家族、医療関係者らは6月26日、検討そのものの中止を訴える集会を東京・日比谷野外音楽堂で開催した。
この問題は昨年10月、厚労省の「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」で急浮上したもの。現在、精神科病棟に1年以上入院する人は日本国内で約20万人おり、10年以上の人が7万人とされるが、この数はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも多い。こうした状況を受け、長期入院患者が地域で安心した暮らしを営むために話し合われるはずだった検討会だが、いつの間にか病院の空き病棟を「活用する」話に替わっていた。
長谷川利夫・杏林大学教授(病棟転換型居住系施設について考える会)は集会で、障がい者が「特定の生活施設で生活する義務を負わない」ことを定めた障害者の権利に関する条約第19条に照らした場合、構想は「明確に違反する」と批判。
元入院患者からも意見が出た。かつて三つの病院に30年入院していたという男性は、「いろんな人の支えがあって暮らしている」と語り、アパートに一人で住み、リサイクルセンターで働いている現状を語った。また、30年間に8回入院した別の男性は、「会いたい人に会える、出かけたいときに出かけられる、プライバシーが守られる、そうした自由と権利は、人間として生きる上で大切」と訴えた。
全国から約3200人が集まった集会では、「施設構想の検討をやめ、社会資源や地域サービスの構築を急ぎ、誰もが地域に普通に暮らすことができるよう強く求めます」とのアピールを採択したが、検討会はこの声を無視する形で、7月1日に報告書をまとめている。
(村上朝子・ライター、7月4日号)