沖縄防衛局が「辺野古工事に着手」――民意無視の強行に地元は猛反発
2014年7月22日6:28PM
沖縄は6月30日、1959年に米軍嘉手納基地を飛び立ったジェット戦闘機が石川市(現うるま市)の宮森小学校に墜落した事故から55年の節目を迎えた。宮森小では犠牲者18人を追悼する集会と慰霊祭が開かれるなど、その悲惨さを語り継ぐ営みが続いている。
だが同日、沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に伴い、県環境影響評価条例に基づく工事着手届出書を県に提出。当局はこれを受けて7月1日、名護市辺野古米軍キャンプ・シュワブ内の飛行場建設予定地にある既存の兵舎や倉庫などの解体工事に着手した。これまで施工区域の水域生物調査や設計業務などを進めてきたが、工事業務の着手は今回が初めて。昨年12月に仲井眞弘多県知事が埋め立てを承認したことで、新基地建設事業が本格的に動き出した(工事完了予定2019年10月31日)。埋め立て工事に伴う護岸建設については別途、着工届出書を県に提出するという。
当局が一連の手続きを進めることで、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ内で普天間飛行場代替施設建設事業の工事が加速すると見られるが、名護市民の民意を踏みにじり工事を強行する政府の姿勢に、県民の反発は強まっている。
政府は7月1日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり閣議決定を行ない、翌2日、キャンプ・シュワブ沿岸域の立ち入り禁止水域の拡大を官報に告示した。告示された水域の変更は日米地位協定に基づく「臨時制限区域」の設置と、漁船操業制限法で常時漁船の操業を禁止する第1種区域の拡大の二つ。防衛省は今月中旬にも現場海域で進入を規制するためのブイ設置作業に着手する方針だ。
過去に同調査が移設に反対する市民の抗議行動で中止された経緯を踏まえ、政府は今回、立ち入り制限水域内での抗議行動を「海上犯罪」として認定し、徹底的な取り締まりを行なうよう海上保安庁に指示している。
新基地建設に反対する稲嶺進名護市長は7月2日の定例記者会見で、政府が埋め立て工事のために辺野古沖で立ち入りを常時禁止する水域を拡大したことについて「正当性を欠く」と一刀両断。キャンプ・シュワブ内で実施されてきた兵舎立て替え工事についても、「名護市側へは詳細な説明がなかった。知事の埋め立て承認後、新基地建設が進展していることをアピールしている」と批判した。今後、法令や条例に基づき「肝心なところで止める運動を展開する」と決意を語っている。
名護市では今年9月7日に投開票される市議会議員選挙に向けて、稲嶺市長を支持する与党側と新基地建設を推進する野党側が、過半数獲得をめぐる支持拡大の神経戦に入った。その結果は今年11月16日に投開票の県知事選挙にも大きな影響を与えると見られている。
【「市民弾圧」抗議の声】
米軍普天間飛行場の代替基地建設に伴うボーリング調査を前に、移設反対派の運動拠点となっている辺野古テント小屋では6月28日、新基地建設予定地とされる名護市辺野古の海で、ボーリング調査と新基地建設反対の海上デモと抗議集会が開かれた。主催者(ヘリ基地反対協議会)発表で県内外から約300人が参加。海上デモには県選出の国会議員や県議会議員と市民約60人が4隻の船と20隻のカヌーに乗りこみ、基地建設に反対を訴えてシュプレヒコールを繰り返した。
集会では、米軍提供水域として「公有水面」で漁業者の立ち入りを制限するのは不当であり、「県民の正当な抗議行動を取り締まるために恣意的に拡大することは、日米地位協定の5・15メモにも反する基地の拡大であり、言語道断」との決議文が読み上げられた。
主催した安次富浩共同代表は「政府の制限水域の拡大に法的根拠はなく、われわれの市民運動を弾圧するのが目的だ」と語気を強め、新基地建設に反対する市民・県民の当然の権利である抗議行動を徹底排除しようとする政府の動きに対して、危機感を募らせた。
(本誌取材班、7月11日号)