「辺野古地区」で米軍基地の海上工事準備強行――非暴力の市民を強制排除
2014年8月15日10:39AM
「何か見えるぞ」「一体、何だ?」
7月27日午前8時、沖縄県名護市大浦湾。市民を乗せて走る小船に声が響いた。前方に見える辺野古崎には米海兵隊基地キャンプ・シュワブがある。政府は普天間基地の移設先として、ここに新たな海上基地を建設しようと計画してきた。7月上旬、安倍晋三首相自らが「なぜ作業が遅れている」と、防衛省幹部に早期実施を指示。「基地はいらない」と訴える県民の声を無視し、深夜に工事資材を搬入するなど緊張が高まっていた。
「青い固まりが海に出てるぞ!」
埋め立て工事の拠点となっていた浜が近づいてきた。大小二つの重機と数十人の作業員がいる。浜からは2メートル四方ほどの青色の物体が金属でつながれ、次々と海に出されていた。市民が24時間体制で阻止してきた海上工事の作業がついに始まったのだ。
「危険なのでここから離れなさい」
2機のエンジンを搭載した海上保安庁(以下、海保)のボートが猛スピードで迫ってきた。合計10隻、それぞれ6~7人の職員が乗りハンドマイクで威嚇する。ビデオカメラでこちらを撮影している職員もいる。彼らは私たちの船をつかみ、乗り込もうとしてきた。別の船では両側からボートで挟まれ大波をかぶり、機材が使用できなくなったメディアもいた。
午前10時すぎ、二人の若者がカヌーで監視行動にやってきた。海保の職員はすぐさまボートを横付けする。一人の若者が海に飛び込んだが、職員たちも海に入り、若者を羽交い締めにした。そして、強制的にボートへ移動。「確保!」。二人は拘束され、陸地まで牽引された。
船から抗議の声をあげていた那覇市の会社員、横山知枝さん(43歳)はこう話す。
「とうとう来たか、という感じ。沖縄の人がこれだけ反対してるのに工事をやるんだな、と」
マリン・スポーツが好きで沖縄に移住した横山さん。米兵が起こす事件がきっかけで基地問題に関心を持ち、辺野古地区での市民運動にも参加してきた。「安倍首相には、あきらめろ、と言いたい。いつまでもアメリカのポチでいるのはやめてほしい」。
本来、米軍の管轄区域であるこのエリアで海保は活動できない。「さっさと工事をやれ!」と声を荒げたとも噂される安倍首相。着任した7月25日、まっさきに海保本部を訪ねた沖縄防衛局の井上一徳新局長。野党陣営は26日、「辺野古新基地は造らせない」との基本合意で翁長雄志那覇市長の知事選擁立を決定。同日、自民党本部が当選を不安視する仲井眞弘多知事が出馬を明言した。海保が丸腰の市民を拘束するに至った背景には、政府側の焦りさえ感じられる。
(尾崎孝史・写真家、8月1日号)