【タグ】福島第一原発事故、東京電力
原発事故で東電元幹部の責任めぐり検審が判断――検察は再捜査・処分再検討へ
2014年8月22日6:36PM
民意は検察の判断に「NO!」を突きつけた。
東京第五検察審査会は7月31日、福島県民が東電元幹部役員を業務上過失致死傷などの疑いで告訴・告発し、東京地検が不起訴とした処分に対して、勝俣恒久元会長ら3人を「起訴相当」とする議決を出したと発表した。「起訴相当」となった残りの2人は、武藤栄、武黒一郎、両元副社長だ。東京地検はこの3人について再捜査を行ない、改めて起訴あるいは不起訴の判断をすることになった。
告訴・告発された残りの3人、小森明生元常務は不起訴不当、鼓紀男、榎本聡明、両元副社長はいずれも不起訴相当となった。
「(告訴・告発した)6人全員でないのは残念だが、特に重大な責任を負う4人が起訴相当・不起訴不当となったのは妥当な判断。議決は一般市民、国民の想いであり、検察審査会は被害者に寄り添った判断をした。検察はこれを重く受け止めて、直ちに強制捜査を開始し、厳正な捜査のもと、必ず4人を起訴してほしい。今も被害は拡大しており、被害者の救済がなされるべきだ」
同日、福島県庁記者クラブで記者会見した告訴団長の武藤類子さんは告訴・告発人が求めている強制捜査による真実の解明と被害者救済を、改めて求めた。
議決は、地震調査研究推進本部(以下、「推本」)の長期評価(マグニチュード8クラスの津波地震が30年以内に20%の確率で発生)や、原子力安全・保安院、原子力安全基盤機構(JNES)や電力会社の「溢水(水の氾濫)勉強会」で、試算で15メートルを超す津波の可能性と、津波による「全電源喪失、炉心損壊にいたる危険性」が検討され、事故は予見できたと指摘。起訴相当の3元幹部役員については、津波に関する手書きメモや発言記録に津波対策の議論や報告の証拠が残されていたことや、現地調査を実施した記載などを具体的に挙げ、「適切な対応策を取らせることが可能な立場にありながら、それを講じなかった」――などとした。
【無責任体質は変わらず、被曝線量限度引き上げも】
会見で副団長の佐藤和良さんは、「いまだに14万人が避難生活を送り、1700人が災害関連死と認定され、汚染水やがれき処理の問題もある」と指摘した上で、「これだけの大事故・公害事件で、まったく責任が問われない異常な事態にあって、国をただすということを市民が判断したのは、画期的なことだ」と述べ、東京都内でも同日、弁護団の河合弘之弁護士らが会見し、同様の見解を示した。
告訴団長の武藤類子さんは会見後、2012年6月からの告訴・告発に加わった福島県民ら1万4716人のなかで、告訴後に亡くなった人がいることに触れ、責任追及も、被害者救済もされないままに時間が過ぎてしまっている問題を改めて強調した。
今回の議決は福島県民には朗報だが、すでに事故から3年5カ月が過ぎている。これまでの時間は長く、しかも国は、被災者に鞭打つ政策を次々と打ち出している。
地元住民が多く含まれる緊急時の作業員に対して、原子力規制委員会は被曝線量限度引き上げの検討を始めた。また、国・環境省はいくつかの県内自治体とともに、一般市民の被曝防護を「徹底した除染による面的防護」から、「個人線量計による被曝管理」へと移行しようとしており、被曝の「自己責任」化・「個人責任」化が加速している。
真の責任者が免罪されるような「無責任体質」に加え、被害者のみが実害を上乗せされ、結果として、その尻拭いをさせられる不条理が福島ではさらに強まろうとしているのだ。
東電側は議決に対して、「検察審査会が検察の処分に対してなされたものであることから、当社としてはコメントを差し控えさせていただきます。いずれにしても要請があれば捜査に真摯に対応して参ります」とコメントした。
(藍原寛子・ジャーナリスト、8月8日号)
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