長崎被爆者代表が原稿変え熱弁――「平和の保障を!」
2014年9月3日10:32AM
原爆投下から69年の8月9日。長崎市の平和公園では市主催の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が行なわれ、被爆者や遺族ら約5900人が参列した。台風11号の影響が懸念されたが、式典は無事に決行された。この中、被爆者代表として「平和への誓い」を読み上げた城臺美彌子さん(75歳)は、当初の原稿にはなかった“想い”をアドリブで、来賓席に座る安倍晋三首相らを前に語った。
「集団的自衛権の行使容認は、日本国憲法を踏みにじる暴挙です」。事前の原稿では「武力で国民の平和を作ると言っていませんか」としていた。続けて、「武器製造、武器輸出は戦争への道」との批判も加え、「平和の保障を!」と声を震わせて熱弁。これに、会場からは拍手が湧いた。城臺さんは6歳の時に、爆心地から2・4キロメートル離れた地点で被爆した。彼女自身に後遺症はなかったが、被爆三世の幼い孫娘を亡くし、自分が被爆したことが原因ではないかと苦悩する日々を送ったという。
城臺さんは式典をこう振り返る。「壇上に立つまでは原稿をそのまま読み上げようと思っていましたが、首相らを前にして、誰かが伝えなければとの思いがこみ上げた。集団的自衛権の行使容認について、黙っていたら肯定になってしまう。(原稿を変えたと)叱られようとも、そんなことは構わなかった」。
また城臺さんをはじめ、田上富久長崎市長、中村法道長崎県知事は福島の第一原発事故のことを取り上げ、被災地の人々を気遣う発言もした。しかし、安倍首相だけは対照的な態度を示した。「平和への誓い」にも、福島のことにも終始ノーコメントを貫いた。安倍首相の挨拶文は昨年のものとさほど変わらない内容で、平和を語る空疎な決まり文句の羅列に、会場からは同じく形式的な力のない拍手が応えた。「どうせ口だけだろ」とどこからともなく聞こえた静かな声が、会場の大勢の気持ちを代弁していたかのようだった。
(白飛瑛子・17歳ライター、8月22日号)