沖縄地方統一選挙で名護市議会は稲嶺与党が過半数――知事選を前に交錯する「民意」
2014年9月25日12:53PM
沖縄県内地方統一選挙にともなう名護市議会議員選挙(定数27)が9月7日に投開票され、現職の稲嶺進市長を支える与党側の候補者14人が当選した。ここに公明党の2人の議員が加わると米軍普天間飛行場の辺野古への移設反対派は16議席となり過半数を超える。一方、推進派の野党・自民党系は1議席増やしたが、当選者は11人にとどまった。投票率は70・40%で過去最低の数値だ。
与党・選挙対策本部の関係者は「11月16日の沖縄県知事選挙へ向けてさらに弾みがついた」と語り、安堵の表情を浮かべた。稲嶺市長は「(立候補していた)16人全員の当選をめざしたが、叶わなかったのは大変残念」と振り返りながらも、「基地問題で同じ姿勢の公明党とも協力しながら、日本政府に対して訴えていく」と自身の後援会でコメントした。
野党の末松文信自民党名護市支部長は、「移設問題は争点にならなかった。移設は国が進める」と記者団に述べ、野党が1議席増えたことについては「これまでよりも前進だ」と分析した。
知事選の前哨戦と位置づけられた今回の名護市議選では、水面下で壮絶な戦いが繰り広げられた。
与党側は「辺野古に新基地はつくらせない」として、「全員当選で市長を支える。強固な体制を築き県知事選挙への大きな流れを生み出す」「政府に(計画を)断念させるための最後の結集を」などと有権者へ支持を訴えた。
野党側はメディア各社のアンケートに無回答を繰り返すなど、その立場をぼかす戦術に徹した。並行して「再編交付金で地元経済は活性化する」との主張を展開。米軍再編推進法(2007年成立)に基づいて、負担が増える周辺市町村には交付金が支給されると宣伝したが、支持は広がらなかった。
【依然として保守も強く】
名護市の政治情勢に詳しい人物は「政府と仲井眞弘多県政の『辺野古強行』姿勢が、名護市民のより強い反発を招いた」と分析する。「告示直前に仲井眞知事が名護入りして自民党市議候補者らのテコ入れを図ったが裏目に出た」。与党側は基地問題を前面に打ち出した候補者の得票数が伸びており、「基地問題に対する訴えの強さが当落を分けた」「意思の明確な候補者に有権者は票を投じた」と解説する。
昨年末の知事承認で動き出した辺野古新基地建設だが、10年1月に稲嶺市長が初当選して以来、選挙で示された名護市の民意は四度にわたり「基地NO」を突きつけている。8月26日に公表された『琉球新報』と沖縄テレビ放送の合同世論調査でも「安倍政権を支持しない」とする回答が81・5%、「移設作業は中止すべきだ」とするものが80・2%だった。
仲井眞知事は8日、「(与党側が)過半数というより野党側が1議席伸ばした」と述べ、「判断の仕方はいろいろあるんじゃないですか。ほかの市町村をご覧になったら、私の政策に賛成する方向の方が多いと思う」と話した。事実、県内全体で「軍事強化」化の動きは予断を許さない状況が続いている。
市議会議員選挙は今回、名護市のほか沖縄・宜野湾・南城・石垣の4市と6町13村で実施された。
普天間飛行場を抱える宜野湾市(定数26)は保守系の佐喜眞淳市長を支える与党が15議席と過半数を占めた。同じく米軍基地に隣接する沖縄市では今年4月に保守系の桑江朝千夫市長が誕生しており、定数30に対して与党が16議席を獲得。石垣市でも保守系の中山義隆市長を支える与党が定数22のうち14議席を獲得した。
いずれも米軍基地問題や自衛隊配備の争点化を避け、経済政策などを強調する戦略が功を奏している。「国策の是非を問うことも大切だが普段の生活も気になる。有権者は微妙な判断ラインを常に行き来している」と、ある県民は語る。
陸上自衛隊の配備をめぐり住民の間で対立がつづく与那国町では、定数6に対して7人が立候補。配備を推進する外間守吉町長を支持しない野党議員が3議席を獲得し、与党側はこれまでの4議席から1議席減となっている。
(本誌取材班、9月12日号)