拉致問題、消費増税で追いつめられた安倍首相──沖縄県知事選敗北、解散か
2014年11月14日5:20PM
11月16日に投開票する沖縄県知事選は前那覇市長の翁長雄志氏(64歳)を現職の仲井眞弘多氏(75歳)が追う展開となっている。一方、前衆議院議員の下地幹郎氏(53歳)、元参議院議員の喜納昌吉氏(66歳)は伸び悩んでいる状況だ。
翁長撃ちに幸福実現党?
安倍政権にとって最大の懸案は、有力の翁長氏が普天間基地の辺野古移設に反対している点だ。複数の事情通によると、数カ月前から警察庁は沖縄県警に対し、翁長氏をおとす、もしくは脅せるスキャンダルがないか照会を求めていたという。しかし確たるものは出てきていない。。そこで街に出てきたのが翁長氏を誹謗中傷する怪文書と宗教団体の存在だった。本誌が確認したものだけで複数枚の怪文書がばらまかれている。
誰がまいているのか。真相を明かすのは西田健次郎元自民県連会長。同氏は今年1月の名護市長選でも辺野古移設反対派の候補をおとすべく怪文書配布を主導した。「今回も宗教団体と連携しているのですか」と尋ねると、「幸福実現党が怪文書を配布してくれている。自民党と幸福実現党が連携するのは沖縄だけだろうが」と笑って答えた。同党は宗教団体「幸福の科学」の政党である。
これについて幸福実現党の広報担当は「幸福実現党が組織的に動いている事実はありません。目下、自民党沖縄県連に抗議している最中です」と回答した。
鉄道建設というアメ
仲井眞氏の出陣式(10月30日)にかけつけた谷垣禎一自民党幹事長の横で、仲井眞氏は“巨大花火”を打ち上げた。総事業費が7000~8000億円の鉄道建設である。
「(那覇市と名護市を結ぶ)『南北縦貫鉄道』もほぼ調査が終わっております。那覇空港のもう一本の滑走路(建設)の後は、直ちにこれが立ち上がるように安倍総理に話をしております。今日は自民党の幹事長さんもお見えですから、一つ、よろしくお伝えください」
仲井眞氏の演説終了後、鉄道建設について谷垣氏に直撃すると、「しっかりとバックアップしていかないといけない」と回答。だが、辺野古移設反対派はこれに憤る。
「全国で鉄道がないのは沖縄だけ。鉄道建設は県民の悲願ですが、新基地建設容認とセットにすべき話ではないでしょう」
櫻井よしこ氏の講演
11月9日には評論家の櫻井よしこ氏も仲井眞氏の応援にかけつけ、豊見城市内で講演した。
「翁長さんを応援しているのは誰ですか。共産党じゃないですか」
「名護市には辺野古移転に反対の方(稲嶺進市長)が通りました。いま副市長は共産党なんですって。教育長も共産党なんですって」
名護市役所関係者は「事実無根です。櫻井氏の発言は公職選挙法に抵触するのではないか」と反論する。櫻井氏はさらにこう続けた。
「(普天間の移設先は)辺野古しかない。辺野古を活用して、アメリカが働きやすくし(中略)この中国の脅威の最前線に、否応なく立たされている沖縄を力強い砦にしないといけない」
安全保障の基礎知識が欠落しているのだろう。那覇市議の屋良栄作氏はこう話す。
「どうしてそういう(櫻井氏のような)発想になるのか。役割や機能を考えれば、海兵隊が沖縄に常駐する必然性はない。沖縄にあるのは、森本敏元防衛相が言ったように『政治的な理由』からです。ここにだけ基地機能を集中させ、強化することは、またも『捨て石』にしかねない発想だと思います」
本土の「捨て石」にされた沖縄戦をくりかえさぬために――これが辺野古移設反対の意思である。
(横田一・ジャーナリスト、野中大樹・本誌編集部)