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多くが“盗掘”により持ち出された先祖の遺骨――東大でアイヌ民族の慰霊祭
2014年11月19日10:10AM
東京大学が保有する198体に及ぶアイヌの遺骨を慰霊するため、10月22日、同大学医学部二号館前でイチャルパ(慰霊祭)が執り行なわれた。旭川アイヌ協議会会長の川村・シンリツ・エオリパック
・アイヌ(「先祖を大事にする人」の意味)さんが祭祀を司り、アイヌ伝統舞踊をレラの会代表の平田幸さんが舞った。雨のなか儀式の厳粛さに学生も足を止め、キャンパスにはアイヌ語の歌が響いた。
文部科学省の調査でアイヌの遺骨が全国12大学に1600体以上存在することが昨年公表され、多くが明治期以降、盗掘によって蒐集されたことが判明している。東大が保管するのは、主に1888~89年に小金井良精医学部教授がクリル諸島や北海道で集めたもの。彼の銅像が標本室入口に飾られていることに、川村さんは憤る。
アイヌ民族と支援者は慰霊祭後、遺骨返還を求める573筆の署名を持って東大本部に向かった。しかし、大学側はビルのシャッターを閉じ、警備員と職員がバリケードを張り、署名は届けられなかった。拒絶の背景には、政府の進める「アイヌ文化の復興等を促進するための『民族共生の象徴となる空間』の整備及び管理運営に関する基本方針」(本誌6月27日号で詳報)がある。
6月13日に閣議決定され、道内・白老町に「遺骨等の慰霊および管理のための施設」を2020年の東京五輪までに作るとした。だが「慰霊」とは名ばかりで、遺骨は引き続き研究対象となる。北海道は開道150年に合わせ、この計画を18年に前倒しする予定。
7月、スイス・ジュネーブの国連自由権規約委員会日本審査でアイヌに対する日本政府の対応が問われた。政府は同閣議決定を持ち出して自画自賛したが、そこにアイヌの意思が反映されているとは言い難い。多くのアイヌは、自分たちの墓に先祖の遺骨を返してほしいと望んでいるからだ。
(根岸恵子・ルポライター、11月7日号)
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