籾井会長に元職員ら1700人――「辞任」か「罷免を」
2014年11月21日6:05PM
この夏、NHKの元職員が行なった異例のアクションの波紋が広がっている。「籾井勝人会長の辞任および罷免」を求める、経営委員会への申し入れだ。賛同した元職員は11月初旬で1700人。まだまだ増える勢いで、理事や局長クラスの経験者を含め、元職員の10人にひとりが署名した。
呼びかけ人の事務局は先月、NHK会長・全経営委員だけでなく、副会長や理事に向けても要求書を提出。公共放送の現状に対する危惧を切々と訴える元職員たちの生の声も添付した。
先日の経営委員会で、籾井会長は、面識のない元職員から資質がないと批判されても困ると言った。今のNHKは逃げ続けるが、元職員らはなんとかしたいだけなのだ。
英国の『タイムズ』紙は、国際放送英語ニュースにおいて、マニュアルがつくられ、「慰安婦」問題や南京大虐殺などの伝え方をめぐり、細かな指示が出されていたと伝える。「慰安婦」については「いわゆる」は使わず、「慰安婦だと申し立てている人」と表現する、などとしている。
真偽はともかくネット上では、部外秘の文書を読むことができる。これは、籾井会長の就任時の記者会見、「国際放送において、政府が右というものを左というわけにはいかない……」と符合する。
用語の問題は、それだけにとどまらず、ニュースの方向を規定する。重大なことと言わざるを得ない。今年の前半はNHK問題。8月以降は『朝日新聞』問題。どちらも安倍政権のメディア戦略が深く影を落としている。
思えば13年前のETV2001番組改変でも、「慰安婦」問題をめぐる安倍晋三氏の言動がかかわっていた。11月16日には、籾井会長辞任・罷免要求の核になった「放送を語る会」の25周年集会が都内で開催される。公共放送はどこへ向かうのか、目が離せない。
(永田浩三・武蔵大学教授、元NHKプロデューサー、11月7日号)