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福島第一原発事故で故郷を喪失の飯舘村民、身体に悪影響も――裁判外紛争解決手続き申し立て
2014年12月4日8:20PM
東京電力福島第一原発事故で被曝を強いられ、故郷を喪失した福島県飯舘村の村民737世帯からなる「原発被害糾弾 飯舘村民救済申立団」が11月14日、東電に対して完全賠償と原状回復を求め、原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。
この日は村民約50人がバスで上京。東京・新橋でバスを降り、「謝れ! 償え! かえせふるさと飯舘村」と書かれた横断幕を先頭に、原子力損害賠償紛争解決センターの第一東京事務所(東京・西新橋)までデモ行進した。
飯舘村はその大半が福島第一原発の30㎞圏外にあるため、村民の避難が大幅に遅れた。事故直後は一時、避難したもののいったん帰村した村民も続出。そのため、子どもも含めた村民は多量の被曝に晒されていた。東電や国、県、村から放射能汚染の状況に関する正確な情報が与えられず、禁止されるまで事故発生後も簡易水道の水を家族皆で飲んでいたという家庭もある。
原発事故発生時、18歳以下だった福島県民約36万7700人のうち、今年6月末時点で57人の子どもが甲状腺がんと確定し、疑いのある者まで含めると実に104人(良性結節1人も含む)に及んでいるが、弁護団によると、今回、ADR申し立てをした子の中にも、甲状腺に腫瘍が見つかった子や、検査で「A2」(甲状腺に小さな結節や嚢胞があるとされた)判定を受けている子が複数いるという。
飯舘村は「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」の3区域に分けられ、同村民は3年以上にもわたる避難生活を強いられている。早ければ2016年3月にも避難指示が解除されるとの話も浮上しているが、村のコミュニティは原発事故で完全に破壊され、「戻りたくても戻れない」のが現実だ。
【謝れ! 償え! かえせふるさと】
同救済申立団の長谷川健一団長は、申し立て後に参院議員会館で開かれた報告集会で、「横断幕に書かれた『謝れ! 償え! かえせふるさと』というスローガンに、私たちの思いがすべて込められている。被害者であるわれわれ自身が原発事故被害を糾弾し、『飯舘村民は怒っているのだ』という意思表示を行ない、立ち上がったのが、今回の申し立てだ」と、怒りをあらわにした。長谷川さんの一家も避難で家族が3カ所に離散し、家業の酪農も休止に追い込まれている。
報告集会では、申し立てに参加した村民たちからも怒りの発言が続いた。
「もう、あの飯舘村は戻ってこないんです」
「我慢に我慢を重ねてきて、ついに怒りを爆発させたんです」
「このままでは、応急仮設住宅が“永久仮設”になってしまう」
「自分たちは難民だと思っている。原発さえなければ、孫と一緒に暮らせたのに」
申し立てでは、東電の謝罪とあわせ、現在の「1人月10万円」の避難慰謝料を、11年3月に遡って35万円に増額するよう要求。他に、被曝による健康不安への慰謝料として1人300万円。生活を破壊されたことへの慰謝料として1人2000万円などを請求した。
今回、申し立てをしたのは、同村の人口(約6300人)の半数近くに相当する2837人。飯舘村では、先行してADR申し立てをしている地域もあり、今回の申し立てで村民のおよそ3分の2が東電にADR申し立てをしたことになる。まだ賠償請求していない村民が3分の1おり、この中には同救済申立団への参加を希望している村民も多数いるため、今後、同救済申立団だけで村の人口の過半を占める可能性がある。
弁護団の保田行雄弁護士は、「同じ避難地域の半数の人たちが集団で申し立てるのは、おそらく初めて。これほどの規模になれば、同救済申立団は今後、政治的な力をも持ちうるだろう」と話している。
(明石昇二郎・ルポライター、11月21日号)
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