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コミュニティを破壊したスーパー堤防

2014年12月15日8:00PM

最後の1軒も12月6日には立ち退く予定という。(撮影/平井康嗣)

最後の1軒も12月6日には立ち退く予定という。(撮影/平井康嗣)

11月17日、東京都江戸川区北小岩1丁目の東部地区から高橋喜子さん(84歳)が、21日には隣に住む長男の新一さん(55歳)ら家族が相次いで、約半世紀も暮らした土地をあとにした。

かつて約90世帯が居住した地区も、残るは1世帯。地域を消滅させたのは、国の「スーパー堤防事業」と区の「土地区画整理事業」との共同事業だ。

スーパー堤防は幅が200メートル前後あり、洪水時でも「決壊しない」のがウリだ。ただし実現には200年の歳月と2兆7000億円が必要とされ、区は江戸川河川部周辺の9万人を立ち退かせようとしている。

2011年、「コミュニティ破壊を招く」として、新一さんが原告団長となり、住民11人が事業取り消しを求めて区を提訴した。しかし昨年12月の東京地裁と今年10月の高裁で敗訴。立ち退きを拒否していた高橋さん親子は「行政代執行による強制解体となると、移転地への移転費も住居費も自腹になる」と立ち退きを決意した。新一さんら住民は11月12日、新たに国を相手取る民事訴訟を提訴した。

「スーパー堤防は、住民の移転同意が必須。だが本事業では誰も同意していない。これを争点に闘いたい」としている。今後、他地区が同じ目に遭わないための闘いと、新一さんは主張する。

(樫田秀樹・ジャーナリスト、12月5日号)

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