築地市場、移転先の土壌めぐり――ヒ素汚染残して開場
2014年12月24日6:18PM
築地市場(東京都中央区)の移転先、豊洲新市場予定地(同江東区)の土壌汚染対策工事を進めてきた都は11月27日、有識者でつくる技術会議(座長は矢木修身・東京大学名誉教授)に汚染土壌の除去、浄化などの工事の完了を報告した。矢木座長は「世界で類を見ない」と評価、岸本良一・東京中央卸売市場長は、「都として安全性が確認できたと認識する」と宣言した。
対策工事の結果として、豊洲新市場予定地で操業していた東京ガス工場由来の汚染物質は現時点で環境基準を下回る。だが、ヒ素は環境基準の10倍を超える地点があるが、ガス工場建設前からの「自然由来」としてそのまま残された。
豊洲予定地は現在、土壌汚染対策法(以下、土対法)の「指定区域」になっている。指定解除するには対策工事後にモニタリング調査をし、基準値以下の状態を2年間保つ必要がある。都は27日、11月から201カ所の井戸で調査を始めたと明かした。だが、地下水の移動などにより、操業由来の汚染が基準値以下を2年間保てるかどうかはわからない。
そもそも、「自然由来」の環境基準を上回るヒ素が残されたので、2016年の新市場開場後も「指定区域」は解除されない。筆者の取材で都の担当者はその点を認めた。「『指定区域』が残ることと安全性は別。技術会議が提言した地下水管理システムで安全は保てます」と強調する。だが、東京中央市場労働組合の中澤誠書記長は、「土対法の指定区域に生鮮食料品を扱う市場を開くなんて論外」と切り捨てた。
また、この問題を追及する水谷和子・一級建築士は、「土対法では、2年間のモニタリングを通して、汚染が生じていない状態の確認も含めて『土壌汚染の除去』としています。除去が未完のまま工事をして誰が責任を取るのですか。汚染が検出されても全井戸の約6割は建造物の下で、汚染箇所を特定する追加調査も対策も物理的に無理です」と批判した。
(永尾俊彦・ルポライター、12月12日号)