米軍新基地、辺野古埋め立ての承認めぐり――沖縄県で第三者委が初会合
2015年2月23日6:24PM
名護市辺野古の新基地建設に必要な埋め立ての「承認」を検証する「第三者委員会」(委員長は大城浩弁護士=元沖縄県弁護士会会長)。この初会合が2月6日、沖縄県庁で開かれた。今後は月2回のペースで10回程度の会合を開催し、「6月中には意見を取りまとめて7月上旬に報告する」との日程を明らかにした。
政府は昨年12月の沖縄県知事選挙や衆議院総選挙で示された「新基地建設反対」の民意を無視、準備工事をゴリ押ししているため、「報告時期の前倒し」が大きな課題として浮上した。大城委員長は、検証内容の質は落とせないとしつつ、「検証を進める間にスピードアップすることもありうる。早くなることは悪いことではない」と前倒しに意欲的な姿勢も示した。
委員会のメンバーは、委員長以外では當真良明弁護士、田島啓己弁護士、沖縄大学の桜井国俊名誉教授(環境学)、琉球大学の土屋誠名誉教授(生態系機能学)、東京大学の平啓介名誉教授の合計6人。全委員が出席した初会合の冒頭では、東京へ赴いたため不在の翁長雄志知事に代わり、安慶田光男副知事が「法律的な瑕疵がなかったのかを検証することが目的」と挨拶、公正中立な検証を求めた後、会議は非公開となった。「国からの訴訟もありうるので『手の内は見せない方がいい』という考えに基づくもの」(県政ウォッチャー)で、終了後、大城委員長が議事内容を説明する会見を開いた。
一方、翁長知事との面談を拒否し続ける菅義偉官房長官は、仲井眞弘多前知事の埋め立て承認について、「関連法制に則してすでに時間をかけて判断されたものだ。政府は予定通り粛々と進める」と述べ、中谷元防衛大臣も「瑕疵があったとは思わない」と足並みを揃えた。しかし、仲井眞知事時代の昨年2月に開かれた県議会百条委員会の証言では、環境生活部が「環境保全についての懸念が払拭できない」と一昨年11月意見表明していたのに、その一カ月後に埋め立て承認がなされた。
【“素人職員”が対応か】
この不可解な経緯について、委員(県議)が問題視、追及する場面があった。
「すでに百条委員会の議事録を読んだ」と話す大城委員長は、「ここが検証のポイントの一つになるだろう」と注目。新基地建設問題を追い続ける「沖縄・生物多様性市民ネットワーク」の吉川秀樹氏は、埋め立て承認を担当した土木建築部海岸防災課の担当者と面談し、次の回答を引き出している。
「承認の判断を下したのは海岸防災課の三名の職員だが、『ジュゴンとサンゴ類と海草藻場の保全』『外来種の問題』『米軍基地の運用に関する問題』に関して専門的知識を持っていなかった。それなのに専門家に助言を求めたり、協議することをせず、『懸念は払拭できない』という意見を出した環境生活部との直接のやり取りもなかった」「制度上、判断する職員が専門家レベルの知見を持たなくても承認可能」。
つまり“素人職員”が専門家に相談せずに埋め立て承認をしたということだ。吉川氏は、「これでは沖縄の環境が守られるはずがない。公有水面埋立法で求められている環境保全の考慮をしたことにはならない」と呆れる。
昨年2月の百条委員会でも土木建築部長が「環境保全への懸念が払拭できないことのみをもって承認基準に不適合とはできない」と証言したが、これも「環境保全の考慮」が欠落した発言だ。当時の土木建築部の対応を突破口とすれば承認の瑕疵が明確になり、検証が加速する可能性は十分ある。
二回目の会合は26日で、各委員の論点提案に加え、担当職員からのヒアリングも予定される。土木建築部の担当職員から「仲井眞知事(当時)の政治的判断で専門家に相談せずに“素人判断”をした」といった発言が出るか否か。大城委員長は「県職員の内部告発は大歓迎」「担当者は当時の経緯を語ってくれるだろう」と意気込む。
(横田一・ジャーナリスト、2月13日号)