人質事件で1200人超の言論人ら声明――政府批判の自粛に重大な危惧
2015年2月25日6:37PM
「ISIL」による日本人人質殺害事件の過程で、政府批判を自粛するムードが広がったことに重大な危惧を覚えるとして、言論・表現活動に携わる約1200人が連名で2月9日、「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」を発表した。
声明は、(1)日本政府の行動や施策が必ずしも人質の解放に役立つとは限らず、常に監視・精査・検証され、批判されるべきは批判されて当然だ、(2)「非常時」を理由に自粛を認めてしまえば、他国と交戦状態に入った時にも適用され、「翼賛体制」の構築に寄与することになる――と指摘し、そうなれば「他国を侵略し日本を焼け野原にした戦時体制とまったく同じではないか」と問いかけている。
単なる安倍政権批判と受け取られないように、「誰が、どの党が政権を担おうと、自身の良心にのみ従い、批判すべきだと感じ、考えることがあれば、今後も、臆さずに書き、話し、描くことを宣言する」と謳った。
きっかけを作ったのは、映画作家の想田和弘さん、元経済産業官僚の古賀茂明さんとジャーナリストの今井一さん。事件が表面化して以来、マスメディアや国会議員までもが政府批判を避けていると実感したことから、「相当に危機的な状況。このままでは国民に正しい情報が行き渡らなくなる」(古賀さん)と声を上げることにした。
2月1日に賛同人を募り始めるとメールや口コミで広がり、映画・演劇関係者、ジャーナリスト、弁護士、詩人、大学教員など、職業や性別、年代、有名・無名を問わず多彩な面々が応じた。「現時点で政府の対応を批判するつもりはないが、同調圧力には強い危機感を抱く」と賛同した人もいる。
今後も賛同人を募る方針だ。「これが始まり。報道機関や記者にも呼びかけたい」と古賀さんは話した。
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(小石勝朗・ジャーナリスト、2月13日号)