加害と被害の事実は東京地裁が認定――重慶大爆撃裁判で原告敗訴
2015年3月19日5:58PM
日中戦争のさなか日本軍が中国の臨時首都重慶に対して5年半にわたり空から無差別爆撃を行なった重慶大爆撃――。その時の被害者・遺族188人が日本政府に謝罪と一人1000万円の損害賠償を求めた重慶大爆撃裁判の判決が、2月25日に東京地裁であり、村田斉志裁判長(河合芳光裁判長が代読)は原告の請求を棄却した。
河合裁判長は「主文、原告らの請求はいずれも棄却。裁判費用は原告負担とする」と読み上げた。言い終えるや3人の裁判官は法衣をひるがえし法廷を後にしたが、その間わずか30秒ほど。満席の傍聴席には30人以上の中国人の姿が見られたが、日本語がわからない人たちの間でざわめきが起こった。国際化の時代に、原告が中国人の民事裁判で、裁判官の発言が日本語だけで済まされていいのかなどの疑問の声も上がった。
ただ、判決書には注目すべき内容が含まれている。判決書では80ページ以上にわたり、200回におよんだ重慶大爆撃の加害の事実と、それによって原告一人ひとりに重大な被害を与えた事実について、「当裁判所の判断」として事細かに記述されているのだ。裁判の弁護団事務局を担当した一瀬法律事務所によれば、「判決書にこれほど長文で具体的な事実確認をした例は、極めてまれ」だという。市街地=非軍事施設への爆撃を国際法違反と認定したことも重要だ。
だが個人への請求権は認めず、1947年に国家賠償法が施行される以前の行為に関し国は賠償責任を負わないとする「国家無答責」などの法理論で、請求は退けた。
ほかの原告・支援者らと来日した栗遠奎原告団長は「188人の原告と10万人の被害者を代表して、不当判決に抗議する。控訴します。日本政府が謝罪するまでたたかいます」と話した。原告団の意向を踏まえて弁護団は、東京高裁に控訴の手続きを開始した。
(鈴木賢士・フォトジャーナリスト、3月6日号)