沖縄防衛局、「辺野古新基地」資料を改竄して公表――埋め立て「承認」正当性揺らぐ
2015年3月31日10:19AM
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設をめぐり、防衛省が設置した環境監視等委員会(委員長・中村由行横浜国立大学大学院教授)の審議に使われた配布資料の一部を沖縄防衛局が改竄し、ホームページ(HP)で公表していた。昨年6月20日の第2回会合で各委員に配られた資料は、辺野古沿岸部に造る仮設桟橋・岸壁の本数を「3本」と明記していたが、3月9日にHPで公表された同じ資料では「1本」に。桟橋の施工手順についても、昨年6月時点で検討されていなかった工法がHP公表資料には書かれていた。
防衛省は「昨年6月20日段階は環境負荷が与えられる最大の案について委員会に諮った」と説明。現在は桟橋1本で工事が進んでいるとして「無用の混乱を招かないよう、現在の計画がいいと判断した」と言う。
たとえば、非公開の審議の発言要旨をまとめる際、各委員の申し出を受けて発言内容を修正することはあり得る。しかし、配布資料に手を加えることは審議の前提条件を変える行為であり、HP公表資料を見た市民は、その内容で審議が行なわれたと勘違いしてしまう。
中谷元防衛相は3月10日の記者会見で、公表のあり方について「配慮が欠ける部分があったかもしれない」と述べ、防衛省側の不手際を認めた。衆院予算委員会分科会でも、防衛省地方協力局の山本達夫次長が「委員会の信頼性に疑義を与え、県民に誤解を与えたとすれば本意ではない」と釈明。「訂正も併せて記載すべきだった」との認識を示した。
【数々の「隠蔽」事例】
本件は「辺野古埋め立て」の根幹からすると枝葉かもしれない。だが問われるべきは、防衛省が改竄した資料を説明せず公表していた姿勢にある。根強い反対がある辺野古問題をめぐり、同省の「隠蔽体質」が指摘された事例は枚挙に暇がない。環境影響評価(アセスメント)ではオスプレイ配備の「後出し」が批判され、海底ボーリング調査をめぐる海上作業では計画の一部が「防衛省秘」に指定され、今もって不明な点も残る。
今回は『沖縄タイムス』の指摘で事実関係が明らかになったが、非公開の審議を数多く抱える同省にとって、この行為が氷山の一角である可能性は否定できない。同省は資料書き換えを各委員にメールなどで事前に伝えていたとするが、取材に対して「知らなかった」と答える委員もいる。
そもそも環境監視等委員会は、埋め立てが予定される辺野古沖の環境保全を担保する役割を持つ。非公開であることを利用して、同省に都合のいい情報を公表し、事業を進めるための“隠れ蓑”にしているとの見方もできる。
改竄だけでない。工事区域を示すブイ(浮標)やフロート(浮具)を固定するため、辺野古海域に設置された大型コンクリートブロックが珊瑚礁を損傷している問題(本誌3月6日号で既報)を追及した市民団体に、防衛省は、同委員会の審議を受けた設置だと説明していた。複数の委員によれば、ブロック設置の提案はあったものの、具体的な重さや設置地点の説明はなかった。珊瑚礁損傷を問題視する委員が相次ぎ、2月に環境監視委の中村委員長が同省に説明の場を求める事態に発展した。そして3月9日には、副委員長の東清二琉球大学名誉教授が辞意を表明。「委員会は(基地建設を進める)結論ありきで、専門家のお墨付きをもらうための意味がない組織だ」と批判している。
賛否ある環境保全策の担保措置として、委員会設置を条件に埋め立てを認めた仲井眞弘多前知事の「承認」の正当性も揺らいでいる。
(西江昭吾+篠原知恵・『沖縄タイムス』記者、3月20日号)