人種差別の実態を報告――目そむける日本政府
2015年4月10日11:35AM
国連から何度も勧告を受けながら日本政府が放置し続けている人種差別の実態について、駐日外国大使館関係者らに生の声を聞いてもらおうという「2015年国際人種差別撤廃デー記念集会」が3月18日、東京・永田町の参議院議員会館で開かれた。85団体、30個人の加盟する人種差別撤廃NGOネットワークが主催した。
「ストップ レイシズム! ストップ ヘイト・スピーチ!」と題する集会では、▽部落差別による結婚の破談▽土地・文化・言葉を奪われたアイヌ民族の現状▽日本による武力併合後は米軍基地が作られ自己決定権を奪われている琉球・沖縄▽フィリピンからの移住女性への暴力と在留資格問題▽日系ブラジル人の子どもの教育問題▽高校無償化から除外された朝鮮学校差別と在日コリアンへの悪質なヘイトスピーチ――などの事例が当事者の口から語られた。
世界177カ国が締約国となっている人種差別撤廃条約に、日本は1995年に加盟。条約締約国は国内で条約を完全実施するという義務を負う。だが日本は、人種差別や憎悪の扇動を禁止し処罰を求める同条約4条について、表現の自由を理由に「留保」している。国連での過去3回の審査でも「人種差別禁止法制定」などの勧告や懸念の指摘を受けてきたが、解決に向けた措置を講じていない。
当事者からの報告を受け、主催者側から師岡康子弁護士が「人種差別問題は歴史的、構造的な問題で、植民地支配と切り離せない」とし、「一番の問題は日本政府が差別の実態に目をそむけ、自ら差別的政策を行ない、これを認めないこと」と指摘。「小手先の運用改善ではなく、人種差別撤廃基本法の制定を」と提言した。会場にはアジア、欧米、中東、アフリカなど28カ国の大使館関係者をはじめ、9人の国会議員も参加。当事者の声を表情を曇らせながら聴いていた。
(片岡伸行・編集部、3月27日号)