運用開始前なのに用途拡大ねらう法案――「共通番号制度の実施延期を」
2015年5月1日1:20PM
住民票があるすべての国民と外国人に12ケタの番号を振り、社会保障や税の個人情報を結び付ける「共通番号(マイナンバー)制度」。運用開始は来年1月なのにもかかわらず、政府は番号の用途を預貯金や特定健診・予防接種のデータに広げるための法案を今国会に提出した。その問題点を明らかにし、制度の実施延期を求める集会が4月6日、国会内で開かれた。
弁護士や学者、医療関係者、地方議員らが2月に結成した「共通番号いらないネット」の主催。
同ネットの原田富弘さんは、共通番号法が「施行後3年をメドに状況を見たうえで(民間を含む)利用範囲の拡大を検討する」旨を定めていることに触れ、政府の姿勢を「なし崩し」と批判した。
さらに「預貯金口座は10億もあるうえ休眠口座も多く、付番手続きはきわめて困難。不正のチェックができるのか」と効果を疑問視。また、医療分野での番号利用は特別の個人情報保護措置が条件なのに未整備なことから、「特定健診データや予防接種履歴を対象にするのは許されない」と主張した。
個人番号の通知は今年10月から始まるが、住民票の住所へ世帯単位で郵送されるため、転居などで届かない人が続出する懸念も指摘された。同ネット世話人の白石孝さんは自治体や企業の準備が遅れていることも紹介し、「このままでは大きな混乱が起きる。少なくとも番号通知の延期を」と強調した。
共通番号制度の危険性についても取り上げられ、(1)犯罪捜査の名目で警察などが共通番号を通じた個人情報を利用できる、(2)一元管理型のシステムに個人情報が集められるので不正アクセスなどで大量流出するおそれがある、といった問題点が示された。
用途拡大法案の審議は4月中にも衆院で始まる見通し。同ネットは引き続き法案への反対を呼びかけるとともに、実施延期のアピールを強めていくという。
(小石勝朗・ジャーナリスト、4月17日号)