仕事を紹介しない職安を大阪地裁がバッサリ――「あいりん職安は違法である」
2015年5月19日10:39AM
「よく考えられた判決と言えます。『合法』という被告の主張はことごとく否定して原告の顔を立てながら、職員に『過失なし』としたのは、『今回だけは許したる。しかし、こんな訴訟がおこらんようにちゃんとせえよ』というメッセージです」――原告代理人弁護団の大川一夫弁護士はこう話す。
4月16日。釜ヶ崎(大阪市西成区萩之茶屋の通称)の労働者4人が、地元のあいりん職安による求職申し込みの拒否処分などの取り消しを求めた裁判の判決言い渡しが大阪地裁であった。傍聴席を埋めた労働者が固唾をのんで見守る中、田中健治裁判長の声が響いた。「却下する」「棄却する」。傍聴人が「仕事紹介せん職安はあいりんだけや。それでええというんやな」と吐き捨てるように言った。
ところが間もなく怒りの声は一変することになる。判決文には、「あいりん職安は(略)日雇労働に係る職業紹介を行うことをその分掌事務とするものである以上、これを行わないのは違法である」とはっきり記されていたのだ。
しかも田中裁判長は、同職安が仕事を紹介しない理由として被告の国が主張した「短時間に大量の求人・求職を受け付ける施設の整備ができない」など3点について、「昭和45年10月頃には(略)職業紹介を行うことが課題として指摘されていたのであるから(略)組織及び設備等の整備を行うべき期間は十分にあった」などと、すべてを退けたのである。ただ、求職申し込みを拒否した職員には「現状の組織や設備等を前提とした対応を取ったことに過失はない」として、訴えを棄却したのである。
原告の一人、釜ヶ崎合同労組の稲垣浩委員長は「あいりん職安はこの判決を真摯に受け止め、早急に釜ヶ崎の労働者に仕事の紹介業務を行う準備にかかれ」との声明を出した。原告らはあえて控訴しないため、あいりん職安を断罪したこの判決は確定することになる。
(佐藤万作子・ジャーナリスト、5月1日号)