入管施設の実態を無視する偏向報道!?――『読売新聞』に収容者が抗議
2015年5月20日9:54AM
茨城県牛久市にある法務省管轄の外国人収容施設、東日本入国管理センター(通称・牛久収容所、佐藤政文所長)の収容者たちが4月18日までに、〈「帰りたくない」難民申請〉との記事(3月29日付)を掲載した『読売新聞』に対し、〈憤りを感じずにはいられません〉との抗議文書を送付した。
『読売』の記事には、次のようなくだりがある。
〈収容施設は刑務所とは異なり、食事時間は自由で、備え付けの電話を使うこともでき、刑務作業もない。収容者は自室で本を読んだり、テレビを見たりして過ごし、自由時間には卓球やサッカーなどもできる。病気の治療も無料だ〉
これだと収容生活がいかにも快適なような印象を与える。抗議文書ではこの点を取り上げ、〈私たちは受刑者じゃないから、刑務所と違ってあたりまえです〉とし、電話代は自己負担であること、治療を申し込んでから診察を受けるのに1カ月以上かかることも珍しくないこと、〈医療体制の悪さと入管職員の不適切な対応のせいでここ1年半5人の収容者が死んで〉いること、長期収容自体が〈精神的虐待以外の何ものでもない〉ことなどを縷々述べる。その上で、〈偏った報道の怖さを新聞社である読売は知らない訳ではないのですね?〉〈自国では望めない平穏な暮らしが日本でなら手にできるかもと胸に夢を抱いてきた人の気持ちが読売には理解できないのですか?〉などと問うている。
また、牛久収容所で3月下旬から4月初めまでに起きた、座り込み強制排除の際の収容者の負傷と抗議のハンガーストライキ(医療措置を約束したことなどから4月7日に収束)の経過を記し、〈しかし、読売新聞はこういう事には関心が無い事でしょう〉と皮肉気味に指摘。収容者は『読売』に抗議の電話もしたが、「納得できる対応はされなかった」という。
『読売』は同じ日の1面で「法務省の調査」を紹介し、「難民申請が不法滞在者の『送還逃れ』にも悪用されている」との見方を示しているが、日本の入管行政が国連人権機関から再三の是正勧告を受けながらそれを無視している事実は紹介していない。〈入管職員の言ってる事だけをそのまんま記事にする事は良くないと私たちは思います〉との収容者の声をどう聞く。
(片岡伸行・編集部、5月1日号)