都教委の免職処分取り消し判決――所見は「信用できない」
2015年5月21日10:50AM
東京都立学校に新任教員として赴任したものの、採用1年目で分限免職となった男性(30代)が、東京都教育委員会(都教委)を相手に処分取り消しを求めた裁判で、東京高裁は4月16日、都教委の控訴を棄却し、一審判決を支持する原告勝訴の判決を下した。
これを受けて、現職の教員らでつくる「すずかけ会」(新採教員解雇撤回の会)は4月21日、都教委に要請書を提出した。要請は、上告を行なわないことと、男性を早急に学校現場に復帰させることの2点。応対した都教委の担当者は、「(関係部署に)伝える」と回答するにとどまった。
男性は2011年4月に赴任。だが、勤務校では校長のパワハラが日常化していた。校長は、男性の初任者研修の指導教員を独断で解任したうえに、教員として不適格とする評価所見を都教委に提出した。自主退職を拒否した男性は、11年度末で免職処分となった。
男性は12年9月に提訴。裁判で、都教委側は研修の指導教員が外れたのは男性の反抗的態度が原因であり、「(男性は)授業中に携帯電話で株取引をしていた」などと事実に反する主張をした。
一方で、校長は初任者研修の年間指導計画にすら目を通していなかったことがわかり、研修体制の杜zさが露呈した。それどころか、都教委は指導教員の不在を把握しながら、そのまま放置していた。
東京地裁は昨年12月、校長の評価所見は「不合理」であり、都教委の免職処分は裁量権の逸脱・濫用で「違法」と断じ、処分取り消しの判決を下した。にもかかわらず、都教委は控訴していた(本誌15年4月10日号参照)。
東京高裁は校長の評価所見は「信用できない」とし、都教委は再び敗訴した。判決を受けて、男性は「安堵した。早く職場復帰したい」と語った。教員人生を狂わす不当な免職処分。あらためて教育行政の責任が問われている。
(平舘英明・ジャーナリスト、5月1日号)