“異性装”からみえる社会の不自由さ
2015年5月22日10:23AM
「エリート」「金持ち」「美人」……人間をはめ込む枠は社会に多数あるけれど、「最もわかりやすく、最も強烈なのは〈男〉〈女〉」(安冨歩東京大学教授)。その区分けを超えたトランスジェンダーの等身大の生と愛を描く『私はロランス』(ドラン監督、2012年)の上映会が4月20日、東京・渋谷のアップリンクで開かれた。上映後、男装をやめた安冨教授と女装家のヴィヴィアン佐藤さんによるトークがあった。
大きなウィッグをつけ、女装歴が長いヴィヴィアンさん。以前行ったディズニーランドでは職員にウィッグを外し、化粧を落とすことを強要されたという。しかもミッキーマウスは記念撮影を拒否。「すかしたネズミね」とヴィヴィアンさんは会場でバッサリ。
一方の安冨教授。街では好奇の視線に晒されることも多いが、職場(東大東洋文化研究所)ではまったく差別を受けることはなく、映画の主人公のような孤独を感じることもないという。最近は「美人」と言われることもあるそうだが、「背が高い」「脂肪が少ない」「彫りが深い」など、男性の特徴が強く出ている女性が「美人」と区分されると分析。結果、大半の女性がブスに区分され、「自分はブス」と思い込まされることが「(男性の)支配の手段として使われている」と指摘。近々論文にしたいと語った。
(小林和子・編集部、5月1日号)