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「金銭解決」派弁護士に3度目の「解雇無効」判決――ブルームバーグ、またも敗北
2015年6月17日11:43AM
「金融情報を通じて世界の資本市場の透明性を高める」というのが米国ニューヨークに本社のある大手の金融・経済情報通信社ブルームバーグ(全世界従業員1万5500人)の信念らしいが、やっていることは不透明きわまりない。
リーマン・ショック(2008年)後、経営側の悪質な人員整理策として一時流行ったPIP(パフォーマンス・インプルーブメント・プラン=成績改善計画)による退職強要の末に男性記者(当時48歳)を解雇し(10年8月)、その解雇が無効(12年10月)と判断されるや即日控訴。高裁結審(13年1月)後の和解協議中、記者職とは無縁の倉庫管理業務への復職を提案し、男性が拒否すると再び解雇(同年3月)。翌月には2度目の「解雇無効」が東京高裁で認定され、会社は上告せずこの控訴審判決が確定したにもかかわらず、今度は「雇用契約不存在」の確認を求めて提訴(13年7月)――といったきわめて理不尽なやり方で男性を職場から排除してきたのだ。「解雇無効」判決が確定していながら復職できない男性側は当然、これに反訴した。
その裁判の判決が5月28日、東京地裁であり、鷹野旭裁判官は子会社のブルームバーグL.P.(東京都千代田区、石橋邦裕代表)に対し、あらためて「解雇無効」を認定し、バックペイ(復帰時までの賃金)の遅延損害金167万円余の支払いを命じた。男性側が求めた慰謝料の請求は退けたものの、一審・控訴審を含め、3度目の「解雇無効」勝利判決だった。
「今回の判決はある意味、当然。日本の法に従わない会社の姿勢は間違っている。会社側は判決を尊重し、謝罪し、今までの記者職で復職させるべき」
判決後、司法記者クラブでの会見で男性はそう述べた。時事通信社での記者歴も含め豊富な経験を持つが、すでに解雇から5年。53歳になった現在、毎月の給与は支払われているもののペンを持つことができない。会見では、会社側の退職強要の手口についての質問も出たが、注目されたのは「金銭解決」を持ちかけてきた会社側代理人・岡田和樹弁護士と、安倍政権が導入をめざす「解雇の金銭解決制度」をめぐる話題だった。
男性側代理人の今泉義竜弁護士はまず、ブルームバーグ側の2度の解雇を「私の知る限りない、悪質なもの」とした上で、「岡田弁護士も解雇の金銭解決を求めている一人。(今回の裁判は)この制度を導入させたい側との闘いだった」と吐露したのだ。岡田弁護士とはどんな人物なのか。
【産業競争力会議でも主張】
〈私は、フレッシュフィールズブルックハウスデリンガーという国際法律事務所、世界でも五指に入る大きな法律事務所の東京オフィスに勤務をしており……〉
安倍晋三首相が議長を務める産業競争力会議の雇用・人材分科会「有識者ヒアリング」(13年11月6日)の議事録に、岡田弁護士の発言が残る。弁護士になって40年ほど。国鉄関係の労働組合側弁護士を25年ほどやり、外資系の事務所に移り、今は使用者側の事件をやっているという。ヒアリングの中で岡田弁護士は、解雇の金銭解決制度の必要性を訴え、「6カ月分の賃金を払ったということを解雇理由の正当性を判断する要素の一つに入れていただきたい」と“お願い”している。しかし次の発言は、3度も解雇の不当性が認定された今となってはあまりに空しい。
〈要するに全く根拠のない解雇ではどうしようもないけれど、社会的に見て合理的と思われる理由があれば、解雇できるということ。今まで14年間外資系の企業(の弁護人)をやっているが、そうした解雇によって、深刻なトラブルになったということは、ゼロとは言わないが、ほとんどない〉
ブルームバーグは今回の判決を受け、「この度の判決を残念に思い、引き続き本件の解決に向け、努めて参ります」とのコメントを出したが、控訴するかどうかは明確にしていない。それにしても、再三の違法判決に懲りない企業の「情報」を誰が信用するのだろう。
(片岡伸行・編集部、6月5日号)
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