「生徒とのメールで教諭免職」、地裁で証人尋問――都教委が校長陳述書を捏造
2015年7月2日10:44AM
「女子生徒に不適切なメールを送った」として、東京都教育委員会から懲戒免職処分とされた都立高校の男性教諭(33歳)が、免職処分の取り消しと損害賠償を求めた裁判の第4回口頭弁論が6月11日、東京地裁(吉田徹裁判長)で開かれた(処分背景は本誌1月30日号で詳報)。
この日は3人の証人尋問が行なわれ、裁判所に提出された校長の陳述書が、都教委によって捏造されていたことや、女子生徒に事実確認することなく免職処分を決定した事実が明らかになった。
男性教諭は、クラス担任の女子生徒に性的表現を含む不適切なメール845通を送信したなどとして、昨年7月14日付で懲戒免職処分された。これに対し教諭は、複雑な家庭環境で虐待されていた女子生徒の相談に乗って、高校生活を支え励ますためのメールだったと主張。「生徒本人の話を聞いてほしい」と繰り返し求めたが、都教委は女子生徒から話をまったく聞かずに免職処分を決めた。
東京地裁は今年1月21日付で、判決まで免職処分の執行停止を決定。都教委側は決定を不服とし即時抗告を申し立てたが、東京高裁(須藤典明裁判長)も5月29日付で地裁の決定を支持し、都教委の裁量権逸脱を示唆。都教委は1月22日付で研修命令を発令し、在籍校への出勤を拒んでいる。
この日の証人尋問は、教諭の事情聴取や免職処分を終始リードした都教委人事部職員課の相賀直・管理主事と、女子生徒、男性教諭の3人に行なわれた。
相賀管理主事は、女子生徒の話を聞かずに処分を決めたことについて、「接触を試みたが父親に断られた」と証言。「家庭で虐待されていたとは思っていなかった。教諭が何をしたか明らかにするのが私の責務で、女子生徒に家庭で虐待があったかどうかは言及も調査もしていない。虐待は本件と関係ないと思う」と開き直った。
【「下書き」と強弁】
一方、男性教諭の勤務校の校長の名前で裁判所に提出された陳述書が、相賀管理主事によって一方的に作成され、署名捺印を指示していた事実が明らかになった。
校長は、5月20日付で裁判所に陳述書を再提出した。その中で校長は、「今年2月の陳述書は、相賀管理主事の指示のもと不本意ながら提出したものです。相賀管理主事から陳述書の原稿が送られてきて、署名捺印して提出するように指示されました。内容は事実に反し、男性教諭に極めて不利になる内容でした」と陳述する。
「虚偽の陳述書を提出しなければならない現実に、ずいぶんと心を痛めましたが、指示に従わないと進退問題にまで発展し、不利益を避けるように提出してしまったのです。保身のために出した陳述書が裁判で使われ、教諭の人生を台無しにしたらと後悔の念が積もり、新たに陳述書を書き直して提出しようと決意したのです」と苦しい心境が綴られている。
校長は心労がたたり、現在は面会謝絶で入院加療中。特任校長の肩書きで休職している。
これに対して相賀管理主事は、「下書きを送ったのは事実。(校長は陳述書を)書いたことがないだろうと思ったので。処分事実を基に整理してメールでやり取りしたが、校長から訂正の申し出はなかった」と強弁した。
女子生徒はプライバシー保護のため、傍聴席から遮蔽するつい立てに囲まれた中で証言した。「先生のおかげで卒業できた」などと記した自身の陳述書について「訂正することはない」と明言。その上で「男子生徒に先生のメールアドレスを聞いて私から初めてメールし、家庭環境や進路の相談をした。(メール上での仮想関係の親密なやり取りは)うれしかった。性的関係は一切ない」としっかりした口調で質問に答えた。
閉廷後、代理人の加藤文也弁護士は、「裁判の山は越えた。裁判所の示唆もあり、都教委は研修センターでの研修を自宅研修に切り替えて、16日には在籍校に戻す方向で考えているようだ」と職場復帰の見通しを語った。
(池添徳明・ジャーナリスト、6月19日号)