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安保法制でゆらぐ公明党の平和の理念(2)──森田実×中島岳志

2015年7月16日3:00PM

安保法制見直し派が優勢

中島 政府の一連の動きは外務省が主導していて、中枢には兼原信克官房副長官補らがいる。彼らは「湾岸のトラウマ」(注2)をよく持ち出します。同じ轍を踏まないように集団的自衛権を行使すべきだ。そうしないと日本は普通の国家として扱われないし、「中国の脅威」に対抗できないということです。彼らと安倍さんのイデオロギーがうまく共犯関係を結んでいる。

今後は公明党が譲れないと考えている線をかなり超えた内容でガイドラインを決め、それを認めるよう圧力をかけてくるでしょう。

森田 安倍は、公明党を免罪符にして日本の平和憲法をつぶそうとしています。自民党が公明党との協議を進めるときには、米国との外交を重視する安保法制見直し派の数人が参加する。彼らは公明党と与党協議しているというポーズをとりながら、自民党内の議論を封殺する。ほかの党員は、議論をする場がないと嘆いていますよ。

公明党も安保法制見直し派が力を持ってきている。衆院議員の中には自民寄りの人も出てきています。公明党本部の中も衆院寄りで、自民党の安保法制に乗ろうとするムードが醸成されてしまっている。自公の衆院議員は選挙協力をしているし、絶えず会合を行なっている。そうして付き合っていると文化や考え方が似てくるんです。

公明党は参議院から代表を出しているので、これが安保法制見直し派の暴走の歯止めになっている。

中島 創価学会には自公路線を「本来の活動からの逸脱」と捉えている人がかなりいます。とくに池田大作名誉会長の側近を務めた人や婦人部、青年部の中に多い。学会内部は一枚岩ではない。私は彼らに「最後の歯止め」として立ち上がってほしいと思っています。

自衛隊員の命、守れるか

中島 公明党の山口那津男代表は湾岸戦争終結直後や、国際連合平和維持活動(PKO)の一環として自衛隊がカンボジアに派遣される前に、現地調査に入っています。イラク戦争の時には、派遣される自衛隊員の壮行会に出席し、「うちの夫、大丈夫なんですか」「もしものことがあったら、あんた責任が取れるんですか」と家族から詰め寄られた経験がある。これが彼の根っこにあって、閣議決定に至る過程でも慎重な態度をとっていましたが、与党協議の場から外された。結局、自民党の高村さんと公明党の北側一雄副代表が中心となって閣議決定の内容が詰められた。参議院議員の山口代表が外され、衆議院小選挙区当選の北側さんが中心となったことが大きかった。

森田 イラク戦争で防衛省(当時は防衛庁)も隊員の家族から非難を浴びた。官邸と外務省の暴走には防衛省も賛同していないところがある。公明党も隊員の命が守られるのか、そこの部分の問題は提起しています。

中島 日本では、「イラク戦争での死者は出なかった」と言われていますが、派遣から帰ってきた自衛隊員の中に、28人の自殺者が出ている。この事実は広く社会で共有した方がいいと思います。

森田 戦争好きの中谷元防衛相ですら動揺しつつある。今度の自衛隊法の改正で、隊員が危険地域に入る可能性も高くなる。

(注2)1991年の湾岸戦争で多国籍軍を結成した米国や各国とは違い、日本は資金のみ拠出。「血を流さない」と批判され、これが負い目となって後のイラク戦争での陸自海自派遣などにつながった。

(2015年4月17日号、一部敬称略、つづく)

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