自衛官の原因別死亡者数を把握していなかった――防衛省のずさんな集計
2015年7月29日5:47PM
7月10日号の本誌記事「イラク派遣で自殺等増加か」に関連して、防衛省は7月9日までに、当初発表していた死者数を大幅に増える方向で訂正し、阿部知子衆議院議員ら質問を行なっていた複数の野党国会議員に伝えた。
訂正があったのは2003年度~14年度の在職中に死亡した自衛官の数と死因の統計。従来191人としていた04年度の死亡者数を207人に訂正したのをはじめ、09年度は168人を185人に、10年度は143人を155人に、11年度も150人を156人に、それぞれあらためた。
数字を誤った原因について防衛省は、自衛官の原因別死亡者数をこれまで集計したことがなかったためだと説明しているという。
憲法違反が明白な集団的自衛権行使に伴う自衛官の危険度について、安倍首相は8日のインターネット放送で「リスクも減っていく」と述べた。しかし、自衛官の死亡総数という基本的なデータすら防衛省は正確に把握していなかったのだから、安倍首相は口から出まかせを言ったのではないだろうか。
一連の訂正によって、03年度~06年度の自衛官の死亡者数をみると、4年続けて200人を超している。ちょうどイラクやインド洋、クウェートへの派遣が行なわれていた時期だ。
また、この03年度~06年度の4年間を陸上自衛官だけについてみると、ほかの期間と比べて突出して死亡者が多く、03年度から各年度、142人、138人、152人、141人だ。07年度~09年度は大きく減って120人台、10年度以降はさらに減って約100人で推移する。14年度は89人だった。派遣によるストレスや疲労によって死者が増えた疑いはぬぐえない。
なお7月10日号で、イラクなどへの派遣経験のある自衛官の死亡者数を124人としたのは123人の誤りであった。謹んで訂正したい。
(三宅勝久・ジャーナリスト、7月17日号)