フジ住宅の在日韓国人社員が会社を提訴――民族差別の文書を社内配布
2015年10月2日10:41AM
関西中心に展開している不動産大手フジ住宅(大阪府岸和田市・宮脇宣綱代表取締役社長)の社員で40代の在日韓国人女性が、「会社側から民族差別的な文書が社内で配られるなどして精神的苦痛を蒙っている」として8月31日、今井光郎同社会長と会社を相手取り慰謝料など3300万円を求める裁判を大阪地裁岸和田支部に起こした。
訴状によると、女性は2002年から同社にパートで勤めているが、2年ほど前から社内では頻繁に今井会長名で中国や韓国を批判する雑誌のコピーやヘイト・スピーチの文面、それらを読んだ社員の「(韓国人は)全般的に自己主張が強い、自分を有利にするための上手な嘘を平気でつく。日本人への警戒心が非常に強い、利己的な人が多いことを感じました」などの感想文のコピーが配布された。
また、パートを含めて社員は教科書採択のための教科書展示会に動員されたりするが、ある教科書を「自虐史観だ」とする社長の感想文などを見せられるなど事実上誘導されていた。
女性は
「展示会は3年前に行かされましたが行くと感想文を書かされます。今年は行ってません。会社内で偏見が盛り上がっていくのが怖かった。このままでは私のような存在の居場所がなくなる」
「私個人への攻撃でなくとも、すごい量の韓国批判などの社内配布によって私がどういう気持ちになるのか会長や会社側は想像ができないのでは」
と話している。
一方、提訴に対して、同社は「訴状が届いていないのでコメントできない」(9月4日時点)としている。
在日韓国人などへの差別問題に詳しいジャーナリストの安田浩一氏は「報道を見る限りなのですが、実はこうした案件は報じられているよりずっと多いのです。街頭でのヘイト・スピーチのような見えやすい形ではないからわかりにくい。しかし、ヘイト・スピーチなどが繰り返されるうちに日本社会で差別のハードルが低くなってしまったため、上場会社のトップともあろう人が堂々とこんな異常なことをする。こうした社会を作り出しているわれわれすべてが考え直すべき時です」と話している。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、9月11日号)