変わり映えせぬ内閣改造、先行き暗い石破氏の旗揚げ――「単色化」する安倍自民党
2015年10月19日10:30AM
安倍晋三首相は10月7日にも内閣改造・党役員人事を発表する。本誌10月9日号は6日校了のため最終結果を載せることはできないが、あるベテラン自民党担当記者が「単色政党になってしまった」と嘆くほど、自民党は安倍カラー一色に染めあがっている。9月の自民党総裁選では安倍氏以外の候補者が一人も出なかった。この事実も「単色化」を物語るが、新人事もその流れにあるとみていい。
6日の時点で菅義偉官房長官、麻生太郎副総理兼財務相、岸田文雄外相、甘利明経済再生相、中谷元防衛相、高市早苗総務相、塩崎恭久厚労相の留任は決定。「公明党ポスト」の国交相は太田昭宏氏から石井啓一党政調会長に交代する見通し。上川陽子法相、山谷えり子拉致問題担当相、有村治子女性活躍担当相の3閣僚の交代が確実視されている。新ポストの「一億総活躍担当大臣」は甘利経済再生相の兼任となる見込みだ。
党4役も谷垣禎一幹事長、二階俊博総務会長、稲田朋美政調会長、茂木敏充選挙対策委員長、高村正彦副総裁の続投が決まった。
変わり映えのない人事の中、6日時点で一人だけ、その去就がはっきりしない現職大臣がいる。石破茂地方創生担当相だ。
【浜田氏らにも見限られ】
石破氏は9月28日、新派閥「水月会」を立ち上げ、3年後の総裁選に臨む意思を示した。設立会見には山本有二元金融相や鴨下一郎元環境相など石破氏の側近らが顔を揃えたが、集まったのは20人にとどまった。しかも盟友の浜田靖一元防衛相、小此木八郎国対委員長代理の姿はない。
「余計なことを言わず、普通にしていれば70人くらいは集まっただろうになあ」
水月会に集まった人数を聞いた菅官房長官は半笑いで、番記者たちにこう言ったという。官邸や自民党にとって、石破氏の“チョンボ”を挙げたら最近だけでも枚挙にいとまがないそうだ。
党内でメディアを威圧する発言が続出していた7月2日、石破氏は「なんか自民党、感じ悪いよね」という言葉で党執行部を牽制した。懸案事項であった安保法案が衆議院を通過する二日前の7月14日には、「『国民の理解が進んできた』と言い切る自信があまりない」と官邸・与党全体に向けて弓を引くような発言をしている。
いずれも国民感情に沿った発言と言えるが、官邸や自民党内では「相変わらず空気が読めない男だ」と呆れる声が続出していた。
ある自民党関係者は「決定的だったのは1年前の9月」だと述懐する。この時もまた、石破氏が閣内に入るか無役になって次期総裁を目指して派閥を結成するかが議論になっていた。党本部では怒号が響きわたったという。
「絶対に閣僚を引き受けるな。一緒に無役になって、次期総裁に向けて準備をすべきだ」
石破氏にこう向けたのが浜田氏だった。安全保障を専門とするが、狭量な安倍官邸チームとは一定の距離を持ち、聞く耳を持つ議員として周囲の評価も高い。
そんな浜田氏の懸命の説得にもかかわらず、石破氏は目の前にぶら下げられた地方創生担当相のポストにつかまってしまった。「浜田が石破を見限る決定的な場面だった」と見る向きは強い。
前出の自民党担当記者は言う。
「総理大臣や、総理大臣を目ざす人間にとって何よりも重要なのは参謀。安倍政権には菅官房長官という強力な参謀がいるから長期政権になっている。浜田氏や小此木氏は人望もあり、国会対策もできる。参謀になりうる党内でも数少ない議員なのに、その彼らが石破氏を見限ってしまった。水月会が、これから勢力を拡げていく見通しがあるとは思えない」
一方、次期総裁の最有力候補に挙がるのが岸田派(宏池会)の領袖である岸田外相だが、安保法制の審議で安倍首相にひとことも苦言を呈さなかったのは記憶に新しい。「当面、憲法9条は改正することを考えない」(5日、岸田派の研修会)そうだが、どこまで真実味があるのか。
(野中大樹・編集部、10月9日号)