【タグ】辺野古新基地、普天間飛行場
沖縄と政府の対立の構図、ますます深まる――「島ぐるみ会議」は訪米予定
2015年11月9日5:40PM
「覚悟を決めた沖縄県側に同じ行政として上級官庁であるはずの政府がどう向き合ってこの問題を解決させることができるのか、日本の民主主義国家としての品格が問われている」
こう話すのは、「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」事務局長の玉城義和県会議員(名護市選出)。
島ぐるみ会議とは、沖縄県内30の自治体単位で自主的に立ち上がった新基地建設に反対する住民組織。玉城氏は、20年前、8万5000人が結集した初の県民大会の事務局長を務めたひと。「この問題」とは、名護市辺野古沖の埋め立ての問題である。
周知のように、沖縄県の翁長雄志知事は10月13日、アメリカ軍普天間飛行場の移設先となっている名護市辺野古沖の埋め立て承認を正式に取り消した。これに対して、27日、石井啓一国土交通相は、埋め立て承認取り消しの執行停止を決めた。また、同日、政府は閣議で、国が知事に代わって埋め立てを承認する「代執行」の手続きに着手することを決定した。
承認取り消しを表明した13日の記者会見で、翁長知事は、表明に続いて就任から約10カ月を振り返り「閣僚との対話や1カ月間の集中協議でも溝が埋まらなかった」と強調したうえで「沖縄の考え方、思い、今日までのいろんなことに理解をいただけることはなかった。裁判を意識し、法律的にも、政治的な意味でも県民、国民に理解いただけるよう、出発していこうという気持ちである」と胸中を話した。
こうした翁長知事の意思に応えるかのように、「島ぐるみ会議」では、翁長知事の取り消しの翌日、県庁記者クラブで共同代表6人が揃って記者会見し「翁長知事を支え、新基地建設を阻止する島ぐるみ声明」を発表した。声明では「安倍政権が沖縄県民の圧倒的多数の民意を無視して辺野古への新基地建設を強行すれば、辺野古新基地や普天間基地のみならず、沖縄県内全ての基地撤去を求める。(中略)沖縄県民の受けた長年の苦難、民意の重さを充分認識するべきだ」と政府の対応を厳しく批判した。
また、同会議では11月15日から市民が中心となった訪米チーム(数十人)を結成し、ロサンゼルスからワシントンまでロビー活動を行なう。沖縄ではこれまでかつてない規模の市民が立ち上がり新基地建設に反対する大きなうねりが巻き起こっている。
【宜野湾市長選で対決】
ここまで、沖縄県と政府との間に決定的な亀裂が生じたのは、行政手続きの過程で双方の大きな認識の違いがあったからだ。翁長知事はこれまで、沖縄の民意を無視し続ける政府に対して、丁寧なまでに行政手続きを踏んできた。先月の9月14日に埋め立て承認を取り消すことを表明。沖縄防衛局に9月28日に任意で意見を聴くことを通知した。
ところが防衛局は「意見聴取でなく、行政手続法が定める『聴聞』を行なうべき」とこれを拒否。沖縄県は「聴聞」を今月7日に実施すると再通知したが、防衛局は陳述書で「承認に何ら瑕疵はなく、取り消しは違法」と文書で回答し県が設けた聴聞の場には出席しなかったのだ。
中谷元防衛相は13日の閣議後の会見で、前知事の承認は「何ら瑕疵はなく、翁長知事の取消処分は違法」と逆に翁長知事を批判し菅義偉官房長官も「日本は法治国家なので」と繰り返し沖縄側を突き放し続けているが、来年早々に頭痛の種がまた一つ増えることになりそうだ。
来年1月には多くの沖縄県民が注目する普天間基地を抱える宜野湾市の市長選挙があるのだ。23日、翁長知事は同席した新人候補の出馬会見の席で「この選挙は絶対に勝たなければならない。その後の県議選、参議院選まで全て勝たなければならない」と述べ安倍政権との対決姿勢を宣言した。
超党派で開催した県民大会から20年。少女暴行事件から何ら変わらない沖縄の現実を政府は直視するべきだ。
(本誌取材班、10月30日号)
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