秘密保護法違憲訴訟、却下も一定の意義
2015年12月10日10:06AM
特定秘密保護法の違憲無効確認などを求めてフリーランス表現者43人が提起した裁判で、東京地裁の谷口豊裁判長は11月18日、訴えを却下。原告らは控訴する。
裁判の中では、原告のひとりである筆者が、邦人人質の取材が同法により阻害されたと主張。これに対し「特定秘密が指定されたことによる直接の影響」だとは必ずしも明らかでない、とされた。また、同じく原告の寺澤有氏(ジャーナリスト)が主張した公安警察が関係する刑事事件で、同法により取材が困難になったことに対しても「仮にそのような事象が発生しているとしても、単に取材拒否の方便として特定秘密保護法の存在を持ち出している」とも解されるとしている。
つまり、裁判所は「不利益処分等(刑事訴追等)が原告らに対して現実的に発動されている等の状況を前提とするものではなく」不適法としたのだ。
ただ、かつて盗聴法施行後に違憲訴訟が起き、判決確定までに盗聴法に基づく盗聴が1件もなく、実質的に施行を遅らせた事実をもとに今回の訴訟を提起した事情もあるので、判決も指摘したように、昨年12月の同法施行以降、「刑事訴追等」の被害を出していない意義は大きい。
秘密保護法の直接的被害者が出るのを阻止するためにも、控訴審と同時に、横浜、静岡、広島で起きている同趣旨の裁判が重要になる。
(林克明・ジャーナリスト、11月27日号)