神戸震災借り上げ住宅被災者――追い出し「合法化」図る
2015年12月11日1:45PM
阪神・淡路大震災の被災者が暮らす借り上げ住宅からの追い出しを巡って紛糾が続く兵庫県神戸市で、今度は市営住宅条例の改定で転居強要を「合法化」し、加速する動きが表面化して緊迫の度を増している。
今夏の条例改定(案)への意見募集(パブコメ)で、短期間に殺到した800件近い反対意見を無視して、9月議会で可決。さらに、詳細を規定する施行規則への意見表明も考慮せず、来年1月1日付で施行に持ち込む構えだ。
神戸市では、(1)満85歳以上(2)要介護3~5(3)重度障害者――などに該当する移転困難者に、継続入居を認めるための改定、という。だが、この基準は話し合いで決めたものではなく、一方的で、「希望者全員の継続入居」を求める住民側の不満は大きい。
また、移転先を予約すれば、最長5年間の移転猶予を認める「完全予約制」も、「小規模か高倍率の団地を予約する時は、3カ所以上の申し込みを求める」とあっては、「確実に転居に追い込むための罠」と、不信感が噴出。さらには、転居方針に従わなければ「借り上げに要した費用を請求する」など、高齢・低所得者が圧倒的な入居者への恫喝・脅迫的な内容も盛り込まれている。
神戸市の借り上げ住宅は当初、3852戸。建設が需要に追いつかないため、UR(都市再生機構、旧日本住宅公団)や民間にも協力を要請して、その建設分を借り上げ、市営住宅として運営してきた。当時の民法では、20年以上の契約ができなかったため、再契約などで対応し、“恒久住宅”として運営するのが基本方針だった。だが、5年ほど前、第2次市営住宅マネジメント計画で公営住宅の削減方針に転じ、追い出しを推進。9月末現在で2066戸まで減らし、空室分の“カラ家賃”をも支払いつつ、転居強要の暴走を続けている。
(たどころあきはる・ジャーナリスト、11月27日号)