海洋保護区求める署名で判明――防衛省のお粗末な認識
2015年12月18日5:51PM
「ジュゴン以外の絶滅危惧種に関する環境省との情報交換は、これから行ないたい」。沖縄県名護市辺野古沖で国が進める米海兵隊新基地建設をめぐり、防衛省担当者から驚くべき言葉が飛び出した。
国際環境NGOのグリーンピース・ジャパンは11月25日、安倍晋三首相に宛てた国際署名「辺野古・大浦湾を海洋保護区に」2万8759筆を防衛省本省へ提出。新基地建設を扱う普天間代替推進グループの担当者に手渡した。
大浦湾ではジュゴンやアオウミガメやベニアジサシなどの絶滅危惧種262種が生息。署名提出に続き、同NGOで海洋生態系担当の小松原和恵氏が「ジュゴン以外の絶滅危惧種の保全について環境省と情報を共有しているのか」と問い質したところ、担当者が冒頭の回答を行なったのである。
一方、米国防総省が今年3月に米連邦議会に提出した報告書では、大浦湾にジュゴンが現れると米軍の訓練に影響を与えるとの記述があることを『沖縄タイムス』が11月23日に報じた。同報道によると、ジュゴンの出現により海兵隊が接近回避のために戦術の変更などを迫られているという。
ところが、沖縄防衛局がまとめた環境影響評価(アセスメント)では、新基地によるジュゴンへの影響はないなどとしており、米側と認識が食い違う。この点についても防衛省側は「米側文書に関しては担当が異なるため承知していない」。お粗末な認識に質疑後、小松原氏は「新基地建設を担当していながら『部署が異なる』との回答は許されない」と語った。
環境影響評価をめぐっては、グリーンピースほか環境団体がかねてより「基地建設ありき」と指摘している。提出に同席した同NGOプログラム・ディレクターのタマラ・スターク氏も「ジュゴン以外の絶滅危惧種について関知しないならば、署名は報われない」と防衛省の対応を批判した。
(斉藤円華・ジャーナリスト、12月4日号)