秘密保護法成立から2年、各地で廃止訴える集会――保阪正康氏「孤立するな」
2015年12月24日10:31AM
特定秘密保護法の成立から2年の12月6日、東京の日比谷野外音楽堂で開かれた大集会など、全国各地で同法や戦争法(安保法)廃止を求める集会やデモが行なわれた。
東京・渋谷の千駄ヶ谷区民会館では、『「秘密保護法」廃止へ!実行委員会』主催による集会が行なわれ、「秘密法と戦争法がつくる『準戦時体制』とは何か」と題して、日本近現代史研究者の保阪正康氏が基調講演した。
思想や政治的立場を超えて昭和の戦争を吟味し後世に伝えるにあたり、①軍事が政治を完全に支配し、勝つまでやる戦争を遂行しようとしたのは日本だけ。②特攻と玉砕に見られる極度の人命軽視、の二つは欠かせないと保阪氏は強調した。歴史に学ばない安倍政権は「立法と司法を蔑ろにする行政独裁体制を進めている」と批判。
保阪氏はまた、現状を図形で示して次のように解説した。「情報の一元化・教育・暴力・弾圧立法の四辺で構成される四角形の中に国家は国民を押し込めようとし、その枠をどんどん狭めていく。四つの辺のうち一つにでも国家が手をつけたとき、その小さな変化に声を上げなければならない。秘密保護法はさしずめ、情報統制の部分にかかる。そして客観的証拠が必要なく自白さえさせれば罪に問える」と、秘密保護法は、戦前の治安維持法のように思想犯を生み出す恐れがあると指摘する。
今後の打開する運動として、永井荷風が書いた戦中の日記『断腸亭日乗』をひき、「こうしたニヒリズムに陥ってはならず、自分にできることをやること」と言う。『毎日新聞』の取材に応えて保阪氏は、「家族や共同生活者を持つこと。愛着を感じる共同体をもつこと。孤立するな」と根本を解く。共同体から疎外され孤立したときに情念的で過激な言動に引かれるからだ。この指摘は、秘密保護法と戦争法を廃止し、この時代を生き抜く基本かもしれない。
(林克明・ジャーナリスト、12月11日号)