事務所賃料や人件費ツケ回し4500万円――自民岡山県連、疑惑の政調費
2016年1月4日10:39AM
政治活動、選挙活動、政党活動に使ってはならない。地方自治法でそうはっきりと定めている地方議員の「政務調査費」(政調費、現在は政務活動費)が、自民党支部の経費に流用されていた――。
法を無視しているとしか思えない自民党議員らによるあきれた公金の使い方が岡山県で発覚した。
きっかけは裁判だ。
自民党岡山県議団(団長・渡辺英気県議、現在36人)らが支出した政務調査費をめぐる住民訴訟(住民側代理人・光成卓明弁護士)が現在岡山地裁でつづいている。その争点のひとつに「会費」問題があった。自民党の岡山県議団が、政調費から毎年議員ひとりあたり36万円を「会費」として集め、県議団が発行する領収書をつけて「支出」として計上してきた。県議会事務局もそれでよしとしてきた。だが身内の領収書では、本当に使ったのかどうかすらわからない。説明せよ、説明できなければ返還せよと原告は追及してきた。
【県支部代表は加藤勝信氏】
使途の説明を県議団はしぶった。これに対して裁判所が開示を促し、数年がかりでようやく帳簿や領収書類が法廷に提出された。結果明らかになった事実に弁護団や原告は驚愕する。
2009年度から12年度の4年間で4300万円にのぼる政調費が、自民党岡山県支部連合会という政党支部(政治資金規正法上の代表者は加藤勝信衆議院議員、現・一億総活躍担当大臣)の事務所賃料や、同支部が雇用する職員5人の給料の一部に充てられていたからだ。
各年度の支出状況はつぎのとおり。
・09年度 賃料120万円、給料974万円
・10年度 賃料120万円、給料956万円
・11年度 賃料120万円、給料955万円
・12年度 賃料120万円、給料969万円
どうみても政党活動の経費だ。政調費で使えるはずがない。
賃料の支払い先は「株式会社自由会館」。代表取締役の千田博通氏をはじめ役員はすべて県議会議員。会社の所在地も県支部連合会と同じ。自民党内で金を回しているだけのようにみえる。
賃料120万円の意味は、自民党岡山県支部連合会(幹事長・天野学県議)と自民党岡山県議団の「申し合わせ事項」という文書でわかった。県連事務所の家賃は月額25万円、うち10万円を県議団で負担するとの合意がなされている。
人件費については領収書がなく「出納簿」だけが開示されたが、やはり「申し合わせ事項」にこんな趣旨の記述がある。
〈県連職員5人のうち、岡山県議会の議員控室に常駐する1人については人件費の8割を県議団が負担し、残りの4人は4割を県議団が負担する〉
5人の給与額は月額34万円から17万円。ほかに、管理職手当、扶養手当、住居手当、調整手当、通勤手当などがそれぞれ計10万円~数万円。年2回、計4カ月程度のボーナスもある。社会保険料を含め、5人に対する年間の人件費は約2500万円。このうち約1000万円を、秘密裡に岡山県民の税金である政調費で賄ってきたことになる。
政調費で支えられた県連職員のなかには元自民党参議院議員候補で県連事務局長の吉田竜之氏もいる。彼らの主要業務が政治活動にあることは、県支部連合会の政治資金収支報告書をみても明らかだ。「政治活動」としてたびたび出張を行なっている。
自民党県連への流用が疑われる政調費の支出は、家賃や人権費のほかにもある。『自由民主』や『りぶる』など自民党機関紙誌の購読料が年間40万円から50万円。4年間で200万円。これを含めると疑惑の支出は約4500万円。
取材に対して自民党岡山県連と同県議団は「係争中につき回答できない」と答えた。違法性を知りながら組織的にツケ回しをはかった可能性は高い。その悪質さは“号泣”元兵庫県議の比ではない。
(三宅勝久・ジャーナリスト、12月18日号)