「市民連合」野党共闘めざし新年初の街頭行動だが――参院選の共闘体制は微妙
2016年1月25日12:50PM
「国家神道の自民党と創価学会の公明党が連立できて、野党が共闘できない理由がない」(高田健氏・総がかり行動実行委員会)。
1月5日、東京の新宿駅西口で「市民連合」(安全保障法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)による初めての街頭演説会が行なわれ、5000人以上が集まった。冒頭の発言は、そのときのものだ。
市民連合は、今年夏の参院選において32の一人区で野党統一候補擁立を政党によびかけ、その統一候補を支援する目的で昨年12月20日正式発足した市民団体だ。
応援する条件は(1)安全保障関連法の廃止、(2)立憲主義の回復(集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を含む)、(3)個人の尊厳を擁護する政治の実現、の3点。現時点では与党が圧勝する勢いで、憲法が権力者を縛る立憲主義がいっそうないがしろにされ、憲法改悪の方向に一気に流れる可能性が高い。
一方の野党は、全面的な共闘体制がとれていない現状だ。そのため、街頭演説会では「市民が政党を揺り動かす」ことを強く意識する発言が目立った。
最初に登壇したのは、安保法制に反対するパパ・ママの会・熊本の瀧本知加共同代表。
「熊本は、参議院選挙の一人区で野党統一候補を実現できた最初の所です。子育てをするママたちは二度決断しました。一度目は安保法制に反対する行動を始めるとき。二度目は、選挙にかかわろうと決めたときです。安保法制が強行採決された後、集会に集まる人数が減り、このままでは大変だと野党の統一候補擁立を要請し応援することにしました。その結果、弁護士の阿部広美さんを野党統一候補にすることができました」
瀧本さんが指摘したように、市民が政党を動かして“オール熊本”を実現させた実績は大きい。他の選挙区でも野党共闘が進められようとしているが、あまりにも速度が遅い。煮え切らない野党に対し中野晃一・上智大学教授は「年が明けても共闘体制をつくっていない。あんたたち、何やってるんだ! と言いたい」と叱咤激励する。
小林節・慶應義塾大学名誉教授は「得票率43%の自民党が70%台の議席(12年12月総選挙の小選挙区。14年総選挙では48%→76%)を獲得している。四の五の言わないで野党がまとまれば50%近く得票するのは明白であり、確実に政権交代が可能だ」とずばり言う。共闘を衆院選にも拡大できれば、本当に可能である。
【政治家たちの反応に濃淡】
街頭行動に参加した政治家たちはどうか。吉田忠智・社民党党首は「国会では、アベノミクスの失敗隠し、軍拡、選挙目当てのバラ撒きを野党が追及しなければならない。参院選では、中央レベルでも県連レベルでも共闘を進めていきたい」と述べた。
以前から野党共闘を強く主張している初鹿明博議員(維新の党)が言う。「野党共闘は当たり前じゃないですか。安倍政権は憲法を破壊してるんですから。維新の党は分裂しました。安倍さんと同調する人たちが出て行ったので、皆さん安心してください!」
共産党の志位和夫委員長はさらに前向きだ。
「(昨年の戦争法反対の動きの中から)希望が見えてきました。主権者が自分で考え行動し、市民・若者など様々な人々が主体的に動いていることがうれしい。立憲主義の破壊は、憲法・ルールを守らないで権力者が独走することであり、独裁政治の始まり。参院選で自民・公明・その補完勢力を少数派に転落させなければなりません。野党がバラバラではダメで、好き嫌いと言っている場合ではない」
民主党代表代行の蓮舫議員も、市民とともに政府を追及する旨を決意表明したが、選挙区での野党共闘については言及しなかった。
埼玉県から駆け付けた主婦(50代)は「野党が統一できないのに苛立ちを覚えてきました。今日の話を聞いて、与党を批判する以上に統一に向かわせるため野党に圧力をかけるのが大事なんだと思いました。地元の野党事務所に電話してみます」と語った。
(林克明・ジャーナリスト、1月15日号)