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日本社会に「真っ当さ」を取り戻す――民間「立憲」臨調が発足
2016年2月8日10:45AM
「違憲戦争法」とも言われる安保関連法が強行成立して4カ月となる1月19日、同法に反対する学者・文化人らが「憲政の常道(立憲政治)を取り戻す国民運動委員会」(通称=民間「立憲」臨調)を発足させた。憲法学者の小林節慶應義塾大学名誉教授が事務局幹事を務め、約30人の世話人が名を連ねる。他に約200人の発起人もいる。
同日、東京・永田町の衆院第一議員会館で発足会見が行なわれ、11人の世話人などが発言した。
同日付の声明文は、「新安保法制(戦争法)は立憲主義を否定した民主主義の暴走であり、違憲だ」「政権が立憲主義を否定して暴走するなら、有権者は選挙でそれを倒して立憲主義を回復すべき」(共に要旨)などと謳う。
小林氏は「破壊された立憲主義のひずみが解消されるまで、月に1回適宜集まり、情勢を分析して発信し続ける。意見の違うグループの人たちとも、公開討論に応じてもらえれば、それをお見せしたい」とする一方、「(会として)政治運動は一切しない」という。
中野晃一上智大学教授(政治学)は、次のように語った。
「かつての日本は、改憲派の小林(節)先生と護憲派の水島(朝穂)先生が自由に討論し、それを見聞きする人たちが理解を深められる国だった。ところが今は、政治の土俵となる部分が壊され、そういう国ではなくなってしまった。右とか左とかいった話ではない。日本社会にある種の『真っ当さ』を取り戻すことが、この会の目的だと思う」
先月、「一般社団法人 ReDEMOS」(リデモス)や「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」も発足した。これらとの関係について、3団体すべてに関わる中野氏は、「リデモスは学生団体『SEALDs(シールズ)』を中心とするシンクタンク。『市民連合』は、今年夏の参院選を視野に野党共闘を後押しし、立候補者の推薦などを行なう。民間『立憲』臨調には政治的な狙いはない」と語る。
【「戦前に戻る」では足りない】
代表世話人の一人の樋口陽一東京大学名誉教授(憲法学)は、「大日本帝国憲法を作った権力者らの掲げたキーワードが立憲政治だった。安倍政治はそれを正面から攻撃している。『戦前に戻る』といった生易しいことではなく、『戦前の遺産』さえ無視しようとしているのだ。だから私たちは、『憲政の常道』とも言える立憲主義を取り戻す必要がある」と語った。
何をもって「立憲主義の回復」かについて、小林氏は「憲法を蔑ろにする政治家を主権者の国民が自覚的に政権から叩き落とすこと」と明確に述べた。そして、「奪われかけている日本国憲法を取り返すことを主権者国民が実体験し、国民の意思に背く政府は許さないという憲法慣習が確立した時、私はこの運動をやめようと思っている」と言い切る。
自民党が「お試し改憲」として掲げ始めた緊急事態条項に関し、水島朝穂早稲田大学教授(憲法学)は次のように述べた。
「安保関連法に入っていなかったのが、国民保護法制の改正案だ。(安倍政治にとって)足りないのは国民や自治体への統制・義務づけであり、憲法に緊急事態条項を入れることが、今後は正面に据えられる。大災害やテロに対応するため、として」
ジャーナリストの岩上安身氏は、ナチスドイツの全権委任法の歴史を挙げたうえで、「(現在の日本でも)緊急事態条項の一発で憲法も何もかも眠らされ、勝負が決まってしまう恐れがある。(格闘技の)スリーパーホールドで落とされてしまうような状態だ。そうなれば試合続行はできない。この緊急事態条項は絶対に認めてはならない」と警鐘を鳴らした。
評論家で本誌編集委員の佐高信氏は、「民主党は自由民主党と名称が紛らわしいので、立憲民主党にすれば違いがハッキリする」と提案した。また、今年夏の参院選の合言葉として「自民党に天罰を、公明党に仏罰を」を提案し、会場の皆を笑わせた。
(星徹・ルポライター、1月29日号)
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