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高浜原発再稼働、電気料金値下げ急ぐ関電――「原発ではない電気選びたい」
2016年2月15日11:39AM
関西電力高浜原発3号機が1月29日午後5時に再稼働した。新規制基準に適合した原発の再稼働は九州電力川内原発1、2号機に続き3機目で、プルサーマルでは初。関電の電気料金は全国でも最高水準とされるが、再稼働を受けて4月以降にも電気料金を引き下げる見通しだ。
電力小売全面自由化による電力会社間の競争の激化を電気料金の値下げで乗り切る構えだが、高浜原発でも川内原発と同様、免震重要棟を設けずに再稼働した。
「高浜原発再稼働反対」。冷たい雨が降りしきる29日夜、東京・首相官邸前の茱萸坂に集まった市民が声を上げた。反原連(首都圏反原発連合)が毎週実施する「金曜官邸前抗議」は今回で通算181回目。主催者発表で600人が参加した。
「川内原発に続く再稼働でとんでもない。川内原発は適合性審査後に免震重要棟の建設を撤回した」と憤るのは東京都内に住む男性(66歳)。「新規制基準は実際に安全施設を設置しなくても、計画だけで適合となる。そんな穴だらけの基準を安倍首相は『世界最高水準の安全』と言っている」と話した。高浜原発では「緊急時対策所」を、計画中の免震重要棟ではなく耐震施設に設けて再稼働にこぎつけた。都内在住の70代女性も「国も電力会社も全然信用できない」と不信感を募らせた。
関電が再稼働を急ぐのは、電力小売の全面自由化を4月に控えるからだ。一般家庭でも電力会社を選べるようになり、ガス会社や通信会社などが割安な料金プランをひっさげ電力小売に参入。顧客をつなぎとめるべく関電が飛びついたのが原発だった。八木誠社長は29日の会見で「来年度のできるだけ早い段階で値下げを行ないたい」と述べた。
「料金が高くても原発ではない電気を選びたい。電力会社をどこにするかはこれから調べるが、電気の中身を確認したい」。妻と7歳の子どもと一緒に金曜官邸前抗議にやって来た都内在住の男性(42歳)は話す。「(再稼働が進めば)子どもたちが将来も原発事故の危険に脅かされることになる」。
高浜原発再稼働への抗議は、関電東京支社前でも行なわれた。
【自然エネルギー新電力】
「4月に間に合わない」
大手電力会社は電力自由化を前に新料金プランを発表。東京電力は電力消費が多い世帯で電気料金が最大5%安くなるプランを用意。関電も料金割引に加えてポイントサービスを充実させる。
新電力各社も割引プランやポイント制などを導入予定だが、契約アンペア数に制限があるなど、一般家庭にとって選択肢が十分確保されているとは言えない。
前出の70代女性も「(電力小売に参入する)ソフトバンクの孫正義社長も脱原発を唱えているが、ポイント制やセット割ではなく、原発でない電気を供給するなら考えたい」と話した。
自然エネルギー電力の普及を目指す「パワーシフト・キャンペーン」は、自然エネルギー中心の電力供給をめざす新電力10社を公表している。ところが、4月に一般家庭への電力を販売すると表明した会社は少ない。当初、4月の販売を予定していた「みんな電力」(東京都世田谷区)も開始時期を6月以降に遅らせた。
理由は法整備や制度運用準備の遅れだ。みんな電力の飯野隆志氏は事情を次のように話す。
「事業開始に必要な法令の改正が2月にずれ込む見込みだ。本来は昨年中に改正されていないと、われわれ事業者は準備に着手できない。また、電力会社を切り替える『スイッチング業務』も、現在は大手電力が行なっているが、4月以降は『広域機関』に一元化される。ところが実際に切り替えられるかどうかを確認する『通信テスト』も4月以降となる。まず社内で検証し、問題ないことを確認してからでないと、会社として自信を持って電力を販売できない」
国は原発再稼働には前のめりだが、国民の「電気を選ぶ権利」の保障には消極的だ。
(斉藤円華・ジャーナリスト、2月5日号)
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